労働時間の上限規制の猶予期間
建設業における労働時間の上限規制の猶予期間が5年間というのは、業界全体が長時間労働の傾向が強く、改善に時間がかかるということが考慮された結果であると言えます。
建設業界は、人手不足や短納期な案件が多いことに加え、昔からの業界の体質が変わらないため、長時間労働が常態化しているという問題を抱えています。国土交通省の調査によると、建設業界は出勤日数が平均的な産業に比べて30日近くも多く、1週間に1日休みが取れない企業や4週間に休みが4日以下で就業している企業が全体の約65%にものぼるという実態があります。
このような状況を踏まえ、建設業界において労働時間の上限規制を短期間で徹底することは難しいと考えられ、5年間の猶予期間が設けられたという背景があります。
ただし、建設業界においても、労働時間の上限規制を遵守することが求められています。従業員の健康や労働環境の改善につながるため、企業側も労働時間の削減に取り組む必要があります。また、労働時間の上限規制によって、生産性の向上や職場環境の改善が期待されます。
時間外労働の上限規制の大枠
2024年4月から施行される建設業の労働時間の上限規制は、特別条項付きの36協定で定められた規制です。この規制では、1週間あたりの労働時間が最大で60時間になります。ただし、特別条項付きの36協定を結んでいる場合には、1週間あたりの労働時間が最大で69時間にまで延長することができます。このように、特別条項付きの36協定を結んでいる場合には、通常の36協定で設定された上限よりも長時間労働が認められることになります。
ただし、特別条項付きの36協定を結ぶためには、事前に労働者の同意を得る必要があります。また、上限を超えた労働時間に対しては、追加の賃金を支払う必要があります。このように、建設業界でも労働時間の上限規制が設けられることによって、長時間労働の是正が進められることになります。
法律改正の具体的内容
法定労働時間として1日8時間、1週40時間労働を超えることは原則禁止となっています。
36協定締結
法定労働時間を超えた場合、「36協定」を締結する必要があります。
とは言え「36協定」を締結しても、①年720時間以内(月平均60時間)の時間外労働、②2~6か月の時間外労働の平均が80時間以内、③単月100時間未満、④月45時間の時間外労働を超えられるのは6か月までという制限があります。
特別条項付き36協定
特別条項付き36協定を締結すれば、建設業の事業者は、上限なしで1年につき6カ月までの時間外労働を許されていました。
2024年4月の労働基準法改正
2024年4月からは「月45時間以内、年360時間以内」という36協定の上限規制が導入され、違反した場合は罰則が科せられるようになります。
建設業においては、法改正適用に5年間の猶予が与えられていましたが、2024年4月からは罰則付きの上限規制がスタートし、違反した事業者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」を科せられる可能性があります。ただし、災害の復旧・復興に限って当面の間は適用外となります。
忘れずに36協定の提出を
労働時間の上限規制が設けられたことにより、労働者を法定労働時間を超えて労働させるためには、36協定または特別条項付き36協定を締結し、その内容を届け出る必要があります。
36協定届は、「36協定」または特「別条項付き36協定」の内容を、労働基準監督署長に提出する書類です。これまでの36協定届では、一般条項と特別条項が混在しており、条項ごとに内容が明確に分かれていなかったため、改正された36協定届では、一般条項と特別条項が明確に分かれている新様式が導入されました。
新しい36協定届では、一般条項は従来通りで、36協定の締結の目的や範囲、労働時間外の賃金等について記載されます。一方、特別条項は、36協定で設けられた上限規制を超えて労働を行う場合に必要な条件や事項について明記されます。
特別条項には、例えば次のようなものが含まれます。
・時間外労働の上限時間 ・時間外労働をする場合の手続き ・時間外労働の対象となる従業員の範囲 ・時間外労働の賃金等についての取り決め
新様式の36協定届は、専用の用紙が用意されており、36協定や特別条項をより明確に示すようになっています。また、36協定届は、締結日から1週間以内に労働基準監督署長に提出する必要があります。
36協定届の新様式は、2021年4月1日から施行されています。なお、これまで使用されていた旧様式の36協定届は、2021年9月30日までに提出されたものについては、受け付けられることになっています。
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