法律改正は頻繁に行われているので情報収集が大変です。皆さんは、関連する法律改正の準備はされていますか?一覧表を作成しましたのでご活用下さい。
2026年 施行一覧(人事・労務中心)
施行日が幅指定・未定のもの
1,2025年5月から3年以内:労働安全衛生法において、労働者50人未満事業場へのストレスチェック義務化が予定されている(実際の施行日は今後の政省令等で確定)。
2,未定:労働基準法の各労働時間制度の見直し等が検討事項として挙げられているが、2026年時点で具体的な施行日は公表されていない。
以下、追加で説明が必要と思われるものを列記し補足説明をします。
2026年1月:石綿障害予防規則
2026年1月1日以降、工作物の解体・改修工事において「工作物石綿事前調査者」資格を持つ有資格者等による石綿事前調査が原則義務化されます。これは石綿障害予防規則の改正によるもので、建築物向けの調査者資格では対応できない橋梁・プラント配管・ボイラー・煙突・電柱などの特定工作物が対象となります。
資格取得には計11時間程度の講習受講と修了考査合格が必要で、石綿関連法令、図面調査、現場調査、報告書作成などのカリキュラムで構成されています。調査では書類調査、現場での目視・試料採取、分析機関への依頼を行い、記録は3年間保存義務があります。一定規模以上の工事では電子報告も義務付けられています。
無資格での調査は法令違反となり、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。虚偽報告や未提出は大気汚染防止法違反となり30万円以下の罰金の対象です。建設業者等は社内で有資格者を養成するか、外部の有資格調査会社と契約する体制整備が急務となっています。
※工事対象の工作物によっては、「工作物石綿事前調査者」でなくても事前調査が可能です。
※労働安全衛生法そのものに条文追加がされてはいませんが、「労働安全衛生法22条(事業者の講ずべき措置)」に基づく省令である石綿障害予防規則が改正され、その結果として“有資格者による事前調査義務”が新たに位置付けられた、という構造になっている。
2026年1月:登録機関・検査業者の不正防止と監督強化
2026年1月1日施行の労働安全衛生法改正により、特定自主検査や技能講習に関わる登録機関・検査業者の不正防止と監督強化が実施されます。これは「機械等による労働災害防止の促進」を柱とする法改正の第1弾で、その後段階的に施行されることになっています。
対象はフォークリフト、クレーン、ゴンドラなどの特定機械等の定期自主検査を行う登録検査業者や、機械の製造許可・検査を行う登録機関です。
規制強化の内容は、①登録要件・欠格要件の強化(不正行為を行った者の登録禁止、虚偽検査や不正な修了証交付の明確化)、②検査基準への遵守義務(統一的な検査基準の設定と遵守義務の法文化)、③不正防止と行政処分の強化(違反時の登録取消・業務停止命令等の整備)が柱となります。
企業側への影響として、委託先が登録業者か、新基準対応済みか、行政処分歴がないかの確認が必要となり、不正な検査・講習委託は自社の安全管理体制にも影響します。また、安全衛生管理規程や特定自主検査台帳の様式を新検査基準に合わせて見直すことが推奨されています。
2026年4月:介護保険改正
2026年4月1日の介護保険法施行令改正では、令和7年度税制改正による影響を調整する時限的な特例が設けられます。対象は令和8(2026)年度分の第1号被保険者(65歳以上)保険料のみで、標準段階そのものを変える恒久的改正ではありません。
改正の背景として、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円へ引き上げられることで、一定の給与所得者の合計所得金額が機械的に減少します。第1号保険料の所得段階は市町村民税課税の有無や合計所得金額を基準としているため、そのまま適用すると保険料段階が下がり、市町村の保険料収入が想定より減少する恐れがあります。
特例では、給与収入が一定範囲(例:55.1万円以上190万円未満)にある人について、合計所得金額や課税・非課税の判定を税制改正前と同様の水準に引き上げて計算し、保険料段階が勝手に下がらないようにします。
適用は令和8年度のみの時限措置で、令和9年度以降は第10期介護保険事業計画において改めて基準が設定されます。市町村は財政見通しを維持でき、被保険者には税制改正の影響を一時的に打ち消す制度的平準化として理解が求められます。
2026年4月:労働安全衛生法改正
2026年4月1日、労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正が本格施行されます。改正の柱は「個人事業者等への安全衛生対策」「メンタルヘルス・ハラスメント対策強化」「化学物質管理の高度化」「機械等による労災防止」の4本で、2026年1月・4月・10月、2027年以降と段階的に施行されます。
主な内容として、①個人事業者や請負人への保護拡大では、作業場所を管理する事業者が同じ現場で働く個人事業者等に対しても安全装置のない機械の使用制限、安全衛生教育、危険の周知等の措置を講じる義務が創設されます。②高年齢労働者の労災防止は努力義務として明文化され、転倒・墜落防止、視認性・動線配慮、健康状態に応じた配置見直し等が求められます。③機械等による労働災害防止では、ボイラー、クレーン、ゴンドラ等の製造許可や検査を民間登録機関が実施できるよう検査制度が見直され、登録機関への監督強化も行われます。④作業環境測定法では個人ばく露測定が新たに位置付けられます。
事業者は安全衛生管理規程の見直しや、検査業者の登録状況確認などの対応が必要です。
2026年:厚生年金保険法・国民年金法改正
2026年4月以降の数年間で、短期在留外国人向けの年金「脱退一時金」について、①再入国許可との関係での支給要件厳格化と②支給対象期間の上限を5年から8年への拡大が段階的に実施される予定です。具体的施行日は「公布から4年以内の政令で定める日」とされ、まだ確定していません。
改正は2025年成立の年金制度改正法により、国内就労する在留外国人の滞在期間長期化と「払い損」問題への対応、将来の年金受給につながる仕組みづくりを目的としています。
見直し内容として、①再入国許可付きで出国した場合、その許可の有効期間内は脱退一時金を支給せず、許可期間満了後に初めて支給対象とします。これは将来日本で老齢年金を受給する可能性がある人の年金権を途中で消してしまうことを防ぐ目的です。②支給対象期間の上限を現行の5年から8年に拡大し、育成就労と特定技能1号で最長8年滞在が想定される在留資格見直しに対応します。
企業側は在留外国人従業員への制度変更の周知や就業規則の更新が必要となり、在留外国人本人は一時帰国時の請求についてより慎重な判断が求められます。
2026年4月:女性活躍推進法改正
2026年4月1日施行の女性活躍推進法改正では、①情報公表のやり方の見直し、②えるぼし認定基準の整理・緩和、③新認定制度「えるぼしプラス(仮称)」の創設が行われます。従業員101人以上企業を中心に、開示情報の量と質、認定制度の活用方法に関する実務対応が必要となります。
公表方法については、一般事業主行動計画等の公表における企業ホームページでの掲載方法が整理され、具体的な基準・様式が示されます。従業員101人以上の企業には、既存の「男女間賃金差異」に加えて「女性管理職比率」の公表が義務付けられ、これらを一体的に公表することが求められます。
えるぼし認定基準は、第1段階の基準が緩和・再整理され、初めて取り組む企業でもチャレンジしやすい内容になります。基準の観点(採用・継続就業・労働時間等・管理職比率・多様なキャリア)は維持しつつ、数値水準や評価方法が調整されます。
新たに創設される「えるぼしプラス」は、月経・更年期・不妊治療等への配慮など女性の健康支援に取り組む企業を評価する上乗せ認定制度です。えるぼしまたはプラチナえるぼし認定企業が対象となります。
2026年4月:医療保険制度改正
2026年4月以降、すべての医療保険者から「子ども・子育て支援納付金」が徴収され、加入者から新たな「子ども・子育て支援金」が医療保険料に上乗せされます。これは介護保険の介護納付金と同様の構造で、医療保険制度を通じて少子化対策の財源を世代横断的に負担させる仕組みです。
制度は子ども・子育て支援法等の改正により規定され、医療保険各法でも2026年4月1日施行の施行令・施行規則整備が行われます。支援納付金は児童手当、出産費用の負担軽減、幼児教育・保育の拡充、こども誰でも通園制度、高等教育費・リスキリング支援、年収の壁対策など少子化対策に充てられます。
負担者は原則として全世代・全医療保険加入者で、被用者保険では被保険者と事業主が折半、国民健康保険では世帯が負担します。健康保険では「子ども・子育て支援金率」を標準報酬月額等に乗じて算定し給与天引きされ、国保では医療分保険料と同様に賦課されます。
実務上の徴収開始は2026年4月分保険料からで、2026〜2028年度にかけて段階的に増額される設計です。企業は社会保険負担増加や給与明細への表示対応が必要となり、加入者には平均数百円/月程度の負担が想定されています。
2026年4月: 労働施策総合推進法改正
2026年4月施行予定の改正労働施策総合推進法により、すべての事業主に対して「カスタマーハラスメント(カスハラ)」「求職者等へのセクシュアルハラスメント(就活セクハラ等)」について、雇用管理上の措置を講じることが義務付けられます。これは多様な労働者が安心して働ける就業環境整備を目的としています。
労働施策総合推進法改正が令和8年4月1日施行によって、女性活躍推進法関連の情報公表義務の拡大されます。例として、従業員101人以上の企業における女性管理職比率の公表義務強化が新たに2026年4月1日から適用とされることになっています。
カスハラ対策(令和8年10月1日施行予定):カスハラは「顧客等からの社会通念上許容される範囲を超えた言動」と定義され、暴言・長時間のクレーム・SNSでの誹謗中傷等が典型例とされます。事業主に求められる措置として、
①方針の明確化と周知(就業規則等での明示)、
②相談体制と事後対応(相談窓口設置、被害者保護)、
③研修・教育(管理職・従業員への周知)、
④不利益取扱いの禁止が定められます。
就活セクハラ等については、求職者やインターンシップ参加者に対する性的言動やプライバシー侵害を防ぐため、採用担当者へのルール整備・研修、相談窓口の整備等が求められます。
企業は就業規則やハラスメント防止規程の見直し、相談ルートとエスカレーションフローの設計、顧客向けの注意喚起が必要です。改正法は従業員数に関わらず全事業主が対象となります。
2026年10月:厚生年金・健康保険改正
2026年10月からの社会保険適用拡大(106万円の壁撤廃・企業規模要件の見直し)により、新たに厚生年金・健康保険に加入する短時間労働者について、事業主に対する時限的な支援措置が導入されます。具体的には事業主が3年間追加負担した保険料分を国等が全額支援する「保険料調整措置」を中心に、賃金引上げや事務負担軽減の支援も用意されます。
制度の背景として、年金制度改正法により短時間労働者への被用者保険適用が拡大され、新たに社会保険に加入するパート・アルバイト等の負担増と事業主の保険料負担増が発生するため、そのショックを和らげることが目的です。
保険料調整の特例では、改正により新たに加入対象となる短時間労働者とその雇用主が対象で、事業主が一時的に負担を増やして被保険者の負担を軽くでき、追加負担分は国から全額支援されます。支援期間は3年間の時限措置です。
その他の支援として、適用拡大により労働時間を増やし社会保険に加入させた事業主へのキャリアアップ助成金等による賃金引上げ支援や、事務負担軽減のための電子申請・相談体制整備が行われます。
企業は対象者の洗い出しと保険料試算、特例利用の判断、労働者への丁寧な説明が必要です。
まとめ
2026年は人事労務・社会保険分野で法改正が集中する年です。
1月には石綿事前調査の有資格者義務化、検査機関規制強化、高年齢労働者配慮義務化など労働安全衛生法改正が段階施行されます。
4月以降は介護保険料の税制改正対応特例、子ども・子育て支援納付金の創設、女性活躍推進法改正による男女間賃金差異・女性管理職比率の公表拡大、えるぼしプラス創設が実施されます。
10月には106万円の壁撤廃による社会保険適用拡大と事業主支援措置が導入されます。またカスタマーハラスメント・就活セクハラへの防止措置も義務化されます。
これらの改正を単発対応ではなく、人材ポートフォリオ、賃金設計、安全衛生、社会保障制度変化を一体で捉え、3〜5年の人事労務戦略に統合的に考えることが必要と考えます。
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