はじめに:フリーランスが抱える深刻な悩みとその背景
現代の働き方の多様化によって、フリーランスとして活動する人が急速に増加しています。しかしながら、企業との雇用関係にないフリーランスは、報酬の不払いやハラスメントといった深刻な問題に直面することが少なくありません。
実際に、2022年の調査では、フリーランスの23%が発注者との取引において「納得できない行為を受けたことがある」と回答しており、そのうち58%が納得できないまま受け入れているという実態が明らかになっています。
このような状況を改善するため、2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が施行されました。本記事では、フリーランスの方々が抱える悩みの相談方法と、新法によるハラスメント対策について詳しく解説いたします。
フリーランス新法が定めるハラスメントの3つの類型
セクシュアルハラスメント(セクハラ)への対策
まず第一に、発注事業者による性的な言動がフリーランスに不利益を与えたり、就業環境を悪化させたりする行為をセクハラと定義しています。具体的には、フリーランスに性的な質問や要求を投げかけ、拒否されると契約の解除を示唆する行為などが該当します。
特に注意すべき点として、フリーランスは契約打ち切りを恐れ、セクハラを受け入れざるを得ない状況に陥りやすいという問題があります。
妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)の防止
次に、フリーランスの妊娠・出産に関する事由に対する言動により、就業環境を害する行為をマタハラとして規定しています。妊娠したフリーランスに契約解除を示唆する行為や、妊娠・育児と業務を両立させるための配慮の申出に対する嫌がらせなどが含まれます。
加えて、妊娠や育児、介護の配慮に関する申出に対応しない行為もハラスメントに含まれるため、事業者は適切な配慮が求められています。
パワーハラスメント(パワハラ)の詳細と対策
さらに、取引上の優越的な関係を背景とした言動で、業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものをパワハラとして定めています。契約内容に基づく成果物を納品したにも関わらず、正当な理由なく報酬の減額ややり直しを威圧的に迫る行為が典型例です。
発注事業者とフリーランスの間にはパワーバランスの差があることが多いため、パワハラが発生しやすい関係性にあることを理解する必要があります。
事業者に求められるハラスメント対策の義務
社内方針の明確化と周知・啓発の重要性
事業者は、ハラスメントの内容やハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化する必要があります。社内報や社内ホームページへの掲載、従業員への研修・講習などを通じて周知・啓発する義務があります。
ガイドラインの策定については、ハラスメントの線引きや問題意識は人によって異なるため、禁止行為を明示し、関係者間で意識共有を図ることが特に重要となります。
相談体制の整備と相談窓口の設置
続いて、フリーランスからのハラスメント相談に対応するための体制整備が求められています。社内の従業員向け相談窓口をフリーランスにも利用させる方法や、外部の専門機関に委託する方法があります。
理想的には男女双方の担当者がいると対応しやすく、外部の専門家は客観的な意見が期待できるでしょう。契約書や発注書に相談窓口の連絡先を明記することが推奨されています。
ハラスメント発生時の迅速・適切な対応
万一ハラスメントが発生してしまった場合には、迅速かつ適切な対応が不可欠です。相談者と行為者の双方から事実を確認し、必要に応じて第三者からも聴取します。
ハラスメントが確認できた場合、被害者の関係改善支援、行為者との引き離し、行為者による謝罪などの措置を講じる必要があります。
フリーランスの悩み相談窓口と解決方法
フリーランス・トラブル110番の活用
フリーランスが発注事業者からハラスメント行為を受けた場合、フリーランス新法への違反行為として相談や申出が可能です。厚生労働省から委託された第二東京弁護士会が運営する「フリーランス・トラブル110番」では、無料で相談を受け付けています。
仕事上や契約上のトラブルに悩むフリーランスが、労働問題に詳しい弁護士に無料で相談できるサービスです。電話やメールでの匿名問い合わせも可能で、必要に応じて対面やビデオ通話での相談も受けられます。
行政機関への申出と解決支援
公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の窓口でも相談を受け付けています。フリーランス新法では、規定内容によって担当する行政機関が異なります。
就業環境の整備に関する違反については、厚生労働省の各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が担当しており、オンラインでの申出も可能となる予定です。
エンタメ業界特有の課題と解決アプローチ
質の高い制作とハラスメント対策の両立
エンタメ業界では、「ハラスメントを気にしていたら現場が回らない」という声も聞かれますが、解決策は「ハラスメント対策をしないこと」ではありません。「ハラスメントに対する関係者の理解度を深めること」が重要だと指摘されています。
必要な指導は法律でも前提とされており、ガイドラインに必要な指導は許される旨を明記することで、指導する側と受ける側双方の理解を深めることができます。
外部相談機関の活用と業界連携
業界特有の事情に対応できる外部相談機関の設置も重要なトピックです。一般社団法人日本ハラスメント協会では、フリーランス新法に対応した「ハラスメント相談窓口」および「ハラスメント調査」の外部委託サービスを提供しています。
平日だけでなく土日・祝日も相談を受け付け、年間維持費は定額制で相談回数に制限がないという特徴があります。
まとめ:安心して働ける環境づくりへの第一歩
フリーランスの悩み相談は、単なる法的義務の履行に留まらず、事業者とフリーランスの間に健全な信頼関係を築くための重要な取り組みです。ハラスメント方針の明確化、相談窓口の設置と周知、発生時の迅速・適切な対応により、フリーランスが安心して働ける環境を整備できます。
フリーランス新法の施行により、ハラスメント対策は義務となりました。しかし、法的な義務を超えて、より豊かで働きやすい協業環境を創造するための合理的な工夫として捉えることが大切です。
悩みを抱えるフリーランスの方は、一人で抱え込まず、適切な相談窓口を活用して解決への第一歩を踏み出しましょう。事業者側も、実効性のあるハラスメント防止策を導入することで、持続可能で良好な関係性を構築していくことが可能となるのです。
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