はじめに:改正公益通報者保護法とは何か
改正公益通報者保護法は、企業の不正を内部告発した通報者を守る重要な法律です。2022年6月に第一次改正が施行され、さらに2025年6月に成立した新たな改正により、企業のコンプライアンス体制は大幅な強化が求められます。
なぜなら、この法律は単なる内部通報制度の整備にとどまらず、企業の経営姿勢そのものを問う内容だからです。つまり、法改正への対応は企業にとって避けて通れない経営課題となっています。したがって、経営者や法務担当者は改正内容を正確に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
本記事では、改正公益通報者保護法の全容を詳しく解説し、企業が取り組むべき具体的な対応策をお伝えします。
2022年施行の改正法:基盤となる制度変更
体制整備の義務化で企業責任が明確に
2022年6月の改正により、従業員数301人以上の事業者には内部通報体制の整備が義務付けられました。具体的には、公益通報対応業務従事者の指定、独立性のある受付窓口の設置、適切な調査体制の構築が必要です。
一方で、従業員数300人以下の企業は努力義務とされていますが、リスク管理の観点から積極的な取り組みが推奨されています。というのも、企業規模に関わらず不正リスクは存在するためです。
守秘義務と罰則の導入で信頼性向上
改正法では、内部通報担当者に法的な守秘義務が課せられ、違反時には30万円以下の罰金が科されます。さらに、通報者の範囲も拡大され、退職者や役員も保護対象に含まれるようになりました。
加えて、損害賠償請求の禁止も明文化され、通報者がより安心して声を上げられる環境が整備されています。
2026年施行予定の改正法:さらなる強化策
行政権限の大幅拡充で実効性確保
2025年6月に成立した新改正法では、消費者庁長官に立入検査権と命令権が付与されます。従事者指定義務に違反した場合、立入検査や勧告を経て、最終的には命令が下される可能性があります。
違反時の罰則も強化され、立入検査拒否や命令違反には30万円以下の罰金(両罰規定)が適用されます。このため、企業は従来以上に精緻な体制整備が求められるでしょう。
フリーランス保護で対象範囲がさらに拡大
新改正法の重要な変更点として、フリーランス(個人事業主)の保護対象化があります。契約終了後1年以内のフリーランスも含まれるため、業務委託契約における不利益取扱いも禁止されます。
したがって、企業は正社員だけでなく、外部協力者に対しても適切な通報環境の提供が必要になります。
通報妨害行為の明文禁止で企業行動を制限
改正法では、通報を事前に抑制・妨害する行為が明確に禁止されます。たとえば、就業規則で内部通報を制限する条項や、「社外に通報しない」という合意の強要は無効とされます。
ただし、「正当な理由」の範囲が不明確なため、企業は和解における守秘義務条項や就業規則の見直しが必要です。というのも、予期せぬ条項が無効になるリスクがあるからです。
推定規定と刑事罰で企業責任が重大化
新改正法の最も重要な変更は、通報後1年以内の解雇・懲戒処分が「通報を理由とするもの」と推定される点です。この推定規定により、企業側が「通報と無関係」であることを立証しなければなりません。
さらに深刻なのは、通報を理由とした解雇・懲戒に対する刑事罰の導入です。責任者個人には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には最大3,000万円以下の罰金が科されます。
ただし、公益通報を行った労働者が不正行為を犯していた場合、企業が適切な措置を躊躇する懸念があります。このため、第三者性のある弁護士への調査依頼など、客観的公正さの確保が極めて重要になります。
企業が取り組むべき具体的対応策
内部通報制度の総点検と強化
企業はまず、現行の内部通報制度が法定指針の要求事項を満たしているか確認する必要があります。特に、従事者指定の適切性、受付から是正措置までのフロー、独立性確保措置の実効性を点検しましょう。
次に、制度の形骸化防止も重要な課題です。なぜなら、単に窓口を設置するだけでは法の趣旨を達成できないからです。
契約書類の全面見直し
就業規則、労働契約書、業務委託契約書などを総点検し、公益通報を制限する条項がないか確認してください。フリーランスとの契約条件についても、不利益取扱いに該当しないよう注意深く検討する必要があります。
また、和解における守秘義務条項の適切性も検討課題です。というのも、過度に広範な守秘義務は「通報妨害行為」と判断される可能性があるためです。
教育と周知の徹底で企業文化を変革
経営層から一般従業員まで、改正法の内容と企業の取り組み姿勢を明確に伝えることが不可欠です。特に管理職には、報復的な不利益取扱いが刑事罰の対象になることを認識させる必要があります。
さらに、フリーランスなど外部協力者にも通報窓口を開放し、安心して声を上げられる環境づくりが重要です。
行政対応の準備で万全な体制構築
改正法施行後は消費者庁による立入検査の可能性があるため、内部通報に関する記録や対応状況を適切に整理・保存しておく必要があります。虚偽報告には20万円以下の過料が科されるため、正確な情報管理が欠かせません。
企業名公表のリスクも考慮し、勧告への適切な対応体制を整備しておくことが賢明です。
施行に向けたスケジュール管理
改正法は公布から1年6か月以内(遅くとも2026年末)に施行されます。消費者庁は法定指針の見直し作業を進めており、企業は最新情報のアップデートに留意する必要があります。
したがって、2026年末までに万全の体制整備を完了できるよう、逆算したスケジュールで準備を進めることが重要です。
まとめ:専門家との連携で確実な対応を
改正公益通報者保護法は、企業のコンプライアンス経営を根本から見直す契機となります。法令遵守はもちろん、企業の信用力向上にもつながる重要な取り組みです。
ただし、指針の内容は膨大で、具体的な措置も多岐にわたります。このため、企業法務に詳しい弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
専門家の助言を得ることで、「違反を見逃さない企業文化」を醸成し、安全で健全な職場環境の実現が期待できるでしょう。改正法への適切な対応は、企業の持続的成長にとって不可欠な投資なのです。
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