昨今、激しい変化の社会経済情勢です。この変化の時代を生き抜くには従前通りの考え方を変えないといけない可能性があります。日本は益々人口減となり市場が縮小していきます。そうなると安易な価格競争となりがちです。そうなると「低価格のサービスを提供できる組織」が生き残ることになります。
この安易な価格競争を避けることは、生き残り戦略の一つかもしれません。
そこで、何回かに分けて「差別化戦略」と呼ばれるものを紹介させて頂き、是非今後の会社の方針の参考にして下さい。
リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは?
リソース・ベースド・ビュー(Resource-Based View、RBV)は、「企業の競争優位性の源泉」を企業内部の経営資源(リソース)に求める経営戦略のアプローチです。
この考え方は、ハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授が提唱した「ファイブ・フォース分析」のように、企業の外部環境や業界内でのポジショニングに焦点を当てる従来の戦略論とは異なるアプローチを取っています。「SCP(Structure-Conduct-Performance)理論(市場の構造が企業の行動に影響を与え、それが市場の成果に結びつくという理論)」がアウトプット側(製品・サービス)の構造や戦略を分析するのに対し、RBVはインプット側である経営資源(リソース)に焦点を当てます。
RBVの核心は、「同じ環境、同じ業界にいる企業の間でなぜパフォーマンスが異なるのか」という問いに対し、企業内部の経営資源の差異が異なるパフォーマンスとなるという考え方にあります。RBVでは、企業、会社組織はそれぞれ異なる資源を持っているのが前提です。結論として、これらの異なる経営資源を如何に活用するかで競争優位を獲得できる、という考え方です。
RBVの起源と背景
RBVの概念は、1984年にバーガー・ワーナーフェルトによって提唱された「A Resource Based View of the Firm(企業を資源からとらえる考え方)」という論文が礎を築きました。ワーナーフェルトは、これまでの戦略論が製品市場や外部環境の分析に偏りすぎていると批判し、企業が他社に模倣できない資源を持つことで「資源獲得障壁」を築き、競争優位を得られると説明しました。
RBVが広く注目されるようになったのは、ジェイ・B・バーニーが1991年に発表した論文「Firm Resources and Sustained Competitive Advantage」がきっかけです。この論文は、世界で最も読まれている経営学の論文の一つとされており、それまで散発的に議論されていた企業リソースの複数の視点を、一つの理論としてまとめ上げた点で非常に大きな貢献をしました。
また、RBVの源流には、1959年に経済学者のエディス・ペンローズが発表した『The Theory of the Growth of the Firm(企業成長の理論)』も挙げられます。ペンローズは、企業は生産資源の束であり、その特性が異なることから、同一の産業構造下でも根本的に異質であると主張しました。
RBVは、経済学、倫理学、法学、経営学、マーケティング、サプライチェーンマネジメント、一般ビジネスなど、多様な分野にまたがる学際的なアプローチであるとされています.
RBVの主要な概念
1,経営資源(リソース)
バーニーは経営資源を「企業が効率性と有効性を向上させる戦略を考案し、実行することを可能にする、企業が管理するすべての資産、能力、組織プロセス、企業属性、情報、知識など」と定義しています。経営資源は、大きく以下のカテゴリーに分類されます。
(1)有形資産(Tangible Resources) 生産設備、不動産、財務資源(金銭的資源)、物理的な資産(工場、製造工程のロボット、地理的ロケーション)、在庫、ブランド、特許、商標など。
(2)無形資産(Intangible Resources) ブランドネーム、特許、組織の評判、文化、知識やノウハウ、蓄積された経験、顧客やサプライヤーとの関係など。
(3)組織ケイパビリティ(組織能力、Capabilities) 顧客対応力、各種人材育成制度、社員の経験や判断、人間関係、組織構造や管理・調整のシステムなど、組織に組み込まれた移転不可能な企業固有の資源であり、他の資源の生産性を向上させる目的を持つもの。
3,資源の異質性(Heterogeneity) 企業がそれぞれ異なるスキル、能力、構造、資源を持っており、それが各企業を独自のものにしているという仮定です。この資源の多様性があるからこそ、企業は異なる戦略を設計し、市場での競争力を高めることができる。
4,資源の不完全移動性(Immobility) 企業が所有する資源が(少なくとも短期的には)他の企業に容易に移動または譲渡できないという仮定です。競争相手が持つ価値ある資源を簡単に手に入れることはできないため、これが企業の競争優位の源泉となり得る。
競争優位(Competitive Advantage): バーニーは、企業が「現在の、または潜在的な競合他社によって同時に実行されていない価値創造戦略を実行できる」ときに、競争優位を獲得していると定義しています。
VRIOフレームワーク
RBVにおいて、どの資源が競争優位の構築に有効かを分析する際のフレームワークとして、VRIO(Value, Rarity, Inimitability, Organization)があります。これは「VRIN(Valuable, Rare, Imperfectly imitable, Non-substitutable)基準」とも呼ばれます。VRIOフレームワークを用いることで、企業が所有するリソースや組織ケイパビリティが競争優位の源泉になるのかを評価し、戦略立案に活用できます。
VRIOの4つの視点は以下の通りです。
- 経済的価値(Value): その経営資源が、事業機会を活かすことに貢献するのか、あるいは直面する脅威を打ち消す助けことに寄与するかという視点です。資源が経済的価値をもたらさなければ、単に「競争劣位」の状態にあります。
- 希少性(Rarity): その経営資源が、ごく少数の競合企業にしか所有されていないか、他の多くの企業では所有されていないかという視点です。多くの企業が同じ資源を持っている場合、競争優位の獲得にはつながりません。希少性の高い経営資源を持つ企業は、その資源をテコに競争に打ち勝つことが容易になります。
- 模倣困難性(Inimitability): 他社に容易に真似されにくいかという視点です。すぐに模倣されてしまうような資源では、短期的には競争優位を築けても、持続的な競争優位にはつながりません。模倣困難性は、以下の3つの観点に由来するとされています。
- 歴史的条件(Historical Conditions):特定の時点や過去の経験などを通じ形成された資源が形成された場合、そのプロセスを再現することは困難です。
- 因果関係の分かりにくさ(Causal Ambiguity):資源と競争優位の間の因果関係が不明確である場合、競合はどの要素を模倣すれば良いか特定できません。
- 社会的複雑性(Social Complexity):企業内の人間関係や文化、組織の複雑性から生まれる資源は、模倣が困難です。 特許のような知的財産も模倣困難性に関わりますが、バーニーは特許が常に模倣困難性を高めるわけではないと述べています。特許は情報公開が必要であり、リバースエンジニアリングが可能であるケースも多いため、特許そのものによって持続的な競争優位性を期待することは避けた方が良いとされています。
- 組織(Organization): 企業が保有する、価値があり、希少で、模倣コストの大きい経営資源を活用するために、報酬体系や管理手法など、経営上の各種仕組みや組織的な方針・手続きが整っているかという視点です。組織全体として資源を最大限に活用できる体制が整っていなければ、その資源は競争優位の源泉とはなりません。
VRIOの問いの順番には重要な意味があります。まず経済的価値があることが大前提であり、次に希少性、そして模倣困難性、最後にそれを最大限に活かす組織が整っているかという順で評価することで、真に持続的な競争優位をもたらす強みを見極めることができます。
RBVと戦略策定
RBVの視点で、経営者は企業の内部資源と能力を最大限に活用できる戦略や競争上のポジショニングを選択することができます。戦略的な資源は相互に関連する資産と能力の複雑なネットワークであるため、組織は多くの異なる競争上のポジションを採用ができます。
ポーターの戦略論は、企業が業界構造や外部環境に対していかに最適な「立ち位置」(ポジショニング)を取るかに焦点を当て、やや規範的(prescriptive)なアプローチでした。つまり、外部環境分析(例:5フォース分析)によって業界の魅力度や競争の性質を理解し、その中で最も収益性の高いポジションを選ぶという考え方でしたが、RBVは、ポーターのこのような規範的な戦略策定アプローチよりもはるかに柔軟であると一般的に考えられています。
RBVに基づくと、企業は自社の内部資源や能力を活かして、市場で様々な競争上のポジションを確立することができます。
(1)価格ポジショニング (Price positioning) これは、企業がコスト効率の高い生産プロセスやサプライチェーン管理能力、あるいは規模の経済性といった内部資源を活用し、競合他社よりも低価格で製品やサービスを提供する戦略です。顧客にとっての「経済価値」は低価格であることによって生み出されます。
(2)品質ポジショニング (Quality positioning) 企業が持つ優れた技術力、熟練した職人、厳格な品質管理プロセス、または高品質なブランドイメージといった希少で模倣困難な資源を用いて、高品質な製品やサービスを提供する戦略です。顧客は品質に価値を見出し、それに対して対価を支払います。
(3)イノベーションポジショニング (Innovation positioning) 研究開発能力、創造的な人材、柔軟な組織文化、特許やノウハウといった革新的な資源を基盤に、常に新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出し続ける戦略です。これにより、市場におけるパイオニアとしての優位性を確保します。
(4)サービスポジショニング (Service positioning) 顧客対応力、充実したアフターサービス体制、顧客データを活用したパーソナライズされたサービス提供能力など、顧客との関係構築に関する資源を強化することで、競合との差別化を図る戦略です。
(5)ベネフィットポジショニング (Benefit positioning) 製品やサービスが顧客にもたらす具体的な便益(例:利便性、健康効果、環境負荷低減など)に焦点を当て、その便益を最大限に引き出すための独自の技術やノウハウ、組織能力を活用する戦略です。
(5)テーラーメイドポジショニング (Tailored positioning (one-to-one marketing) これは、個々の顧客のニーズや好みに合わせて製品やサービスをカスタマイズする能力、顧客データベース、個別対応が可能な営業体制といった組織的な柔軟性や情報資源を最大限に活用する戦略です。これにより、顧客との深い関係性を築き、高い顧客ロイヤルティを獲得します。
主要な経営者のタスクは以下の通りです。
- 企業の潜在的な主要資源を特定する。
- これらの資源がVRIO(VRIN)基準を満たしているか評価する。
- 評価を通過した資源を開発、育成、保護する。
資源を特定する際には、バリューチェーン分析が有効なツールとなります。これは、製品やサービスが連鎖する事業活動の中でどのように価値が創造されているかを分析し、自社の強みがどこにあるかを検討するフレームワークです。
RBVへの批判と課題
RBVによって多くの経営的な視点をもつことができましたが、いくつかの批判も無くはありません。
- 同義反復(Tautological):RBVは「価値のある資源が競争優位をもたらす」という、当たり前のことを述べているに過ぎないという批判があります。
- 実務への応用の難しさ:理論が部分均衡的であり、また「リソース」→「競争優位」という因果関係が単純すぎ、その間の論理が飛躍しすぎているため、具体的なアクションとして何をすべきか分かりにくいという課題が指摘されています。
- フレームワークの貧弱さ:ポーターのSCP理論には明確なフレームワークがあるのに対し、RBVにはそれが乏しいと言われています。これにより、一般的にRBV理論が実務で自在に扱われていると思われにくく、メッセージ性が弱いという印象があります。
- 外部要因の軽視:資源の有利な活用のみに焦点を当て、業界全体の外部要因(例:ポーターの産業構造分析)を無視しているという批判もあります。
実践におけるRBVの考え方
たとえば、ある金属製品メーカーが「ソリューション営業力」を強化しようとするケースを考えてみましょう。この「ソリューション営業力」がVRIOの各要素を満たすかを検討します。
- 価値(Value):顧客の潜在的なニーズを引き出し、新たな受注やビジネス拡大につながる可能性があれば、経済的価値はあります。
- 希少性(Rarity):現時点で競合がソリューション営業力を有していないのであれば、希少性はあります。
- 模倣困難性(Inimitability):もし、数日間の研修や優秀な人材の採用だけでソリューション営業力が向上するなら、それは容易に模倣されてしまい、持続的な競争優位にはつながりません。真の模倣困難性を築くには、特定の営業担当者の属人的な能力に頼るのではなく、顧客の課題特定能力、クリエイティブな解決策の発想力、自社製品と結びつけるマッチング力など、複数の異なる力を組織全体に「インストール」する必要があります。特に、ベテランの営業課長などが新しいスキルを習得し、組織の末端レベルまでスキルを開発するためのマニュアル化や定式化といった骨の折れる作業を経て、そのプロセス自体が他社には真似できないものになることが重要です。
- 組織(Organization):研修は一過性のものであり、その営業力が常に力を発揮し続けるためには、評価制度、組織体制、日常のコミュニケーション方法などの設計が必要です。例えば、ソリューション営業の手法で顧客の信頼を勝ち取ったケースを高く評価する仕組みや、マニュアルの改訂プロセスを組織に根付かせることが求められます。
このように、単に「良い人材を採用する」だけでなく、持続的な競争優位性を意識した広い視野で育成の仕組みを設計し、普通の人材でも高いパフォーマンスを発揮できるような「再現性のある組織」を目指すことがRBVの教えとなります。ミドルリーダーは、安易な競争優位性を求めず、「なぜ競合は真似できないのか?」という問いを常に意識し、顧客にとっての経済的価値を追求しながら、VRIOフレームワークを組織内の議論の起点として活用することが重要です。
RBVの考え方は、まるで企業を「特殊な道具箱」と捉えるようなものです。多くの企業が似たような道具(経営資源)を持っていても、あなたの会社の道具箱にだけ、他にはない珍しい道具が入っていたり、あるいは、ごく普通の道具でも、それらを組み合わせるユニークな使い方や、道具のメンテナンスを怠らない素晴らしい習慣が身についていたりする。その珍しい道具や、ユニークな使い方、そして優れた習慣こそが、他社には真似できない「競争優位」を生み出す秘密の力となるのです。
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