2025年(令和7年)4月から建設現場に関連する労働安全衛生に関する重要な法律改正が施行されます。
事業者が保護する対象が拡大!?
この改正の主な内容は、事業者が危険箇所等で行う作業に対する保護措置の対象範囲が拡大されることです。これまでは自社の従業員に対してのみ義務付けられていた危険箇所等での作業に関する措置(退避、危険箇所への立入禁止、火気使用禁止、悪天候時の作業禁止など)が、同じ現場で働くすべての人が対象に含まれるようになります。これには、一人親方や他社の従業員、資材搬入業者、警備員なども含まれます。
法律改正の原因となった判例
この改正は、2021年5月17日の建設アスベスト訴訟最高裁判決を踏まえたものです。この判決では、労働安全衛生法に基づく規制が労働者に限定されるものではなく、労働者以外の者も保護の対象となるという重要な判断が示されました。この判決を受け、一人親方等の保護に関する法令改正が進められました。
そもそも、建設現場は「墜落・転落」や「はさまれ・巻き込まれ」などの重篤な労働災害が発生しやすい環境であり、2023年(令和4年)には建設業の労働災害による死亡者数が223人で全産業の29.5%を占め、業種別で最も多い状況です。死亡災害の原因の約4割が足場などからの墜落・転落であり、これは何年も変わっていません。労働災害統計に含まれない一人親方などの死亡者数も多く、その多くが墜落・転落によるものです。このような現状から、建設現場における安全衛生対策の強化は極めて重要であり、今回の保護措置の対象拡大は、労働災害の未然防止や作業現場全体の安全向上に繋がることが期待されています。
事業者の責任は?
改正後の事業者対応として、これまで従業員に対して行っていた措置を、同じ現場で働くすべての人を対象に含めて行っていくことになります。また、事業者が下請事業者や一人親方に保護具等の使用や特定の手順・方法による作業を行わせる場合、「保護具等の使用」や「特定の手順や方法により作業を行うこと」が必要な旨を周知することが推奨されています。
周知は請負契約の相手方に対して行う必要があり、例えば一次下請事業者は二次下請事業者に周知義務がありますが、三次下請事業者への周知義務は二次下請事業者にあります。ただし、事業者が適切に周知を行ったうえで、下請事業者や一人親方が自らの判断で保護具を使用しなかった場合、事業者にその責任が求められるものではありません。
元請会社の責任は?
「元請会社の責任」については、労働安全衛生法第29条第1項・第2項に規定されています。元方事業者(元請会社)は、関係請負人が労働安全衛生法やそれに基づく命令(今回の改正4省令を含む)の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければなりません。また、違反していると認めるときは必要な指示を行わなければなりません。したがって、今回の改正で義務付けられた措置(例えば、二次下請事業者が三次下請事業者に対して行う周知)を関係請負人が行っていない場合は、元方事業者(元請会社)は必要な指導・指示を行う義務があります。
なお、事業者が適切な周知を行ったにもかかわらず、下請事業者や一人親方が自らの判断で措置を無視する行動(例えば、保護具を使用しないことなど)を行った場合、事業者にその責任を求めるものではありません。周知を受けた請負人等自身が、確実に措置を実施することが重要です。
まとめると、一次下請会社が二次下請会社に周知義務を負う場合でも、元請会社(元方事業者)は、労働安全衛生法第29条に基づき、関係請負人である一次・二次下請会社が必要な措置や周知義務を遵守しているかを確認し、違反があれば指導・指示を行う責任があります。
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