人手不足が深刻化している昨今、①何とか従業員を採用しようとする動きと同時に、②なるべく人手を介さないで生産性を向上させる設備の導入や更新が重要視される二通りの動きがあります。ここでは、②の企業が実施する生産性向上への設備導入を行うメリットについて紹介します。
生産性向上の為の設備導入・更新のメリット
企業が行う「生産性向上の為の設備導入・更新」の考えられるメリットは、次の通りです。
1,効率化とコスト削減
新しい設備や技術の導入により、生産プロセスの自動化や効率化が進みます。これにより、労働時間の短縮や人件費の削減が可能となり、総生産コストの低減が実現します。また、最新の機械やソフトウェアを導入することで、故障やダウンタイムが減少し、生産ラインの稼働率が向上します 。
2,品質の向上
最新の設備は高度な精度と信頼性を持っており、製品の品質向上に寄与します。これにより、不良品の発生が減少し、顧客満足度の向上とともにブランド価値の向上も期待できます。また、高品質な製品を安定して供給することで、新規顧客の獲得や市場シェアの拡大も可能となります 。
3,柔軟な生産対応
現代の市場では、顧客のニーズが多様化・高度化しています。新しい設備を導入することで、製品の多様化やカスタマイズへの対応が容易になり、顧客の要求に柔軟に応えることができます。これにより、競争力の強化と市場での優位性が確保されます 。
4,従業員のモチベーション向上
最新の設備を導入することは、従業員に対してもポジティブな影響を与えます。作業環境の改善や業務の効率化により、従業員の負担が軽減されるだけでなく、最新技術に触れる機会が増えることで、スキル向上やモチベーションの向上につながります 。
設備導入・更新に対する助成金のメリット
設備導入や更新に際しては、国や地方自治体からの助成金を活用することができます。これには以下のようなメリットがあります。
1,初期投資の軽減
助成金を利用することで、設備導入や更新にかかる初期投資を軽減することができます。これにより、資金繰りが改善され、他の重要な分野への投資も可能になります。特に中小企業にとっては、大きな財政的負担を軽減する助けとなります 。
2,競争力の強化
助成金を活用することで、最新の設備を導入する際のコスト負担が軽減され、他の企業と比較して競争力が強化されます。これにより、技術的な優位性を確保し、市場でのポジションを強化することができます。
3,持続可能な経営の実現
助成金は、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減を目的とした設備導入に対しても支給されることが多く、これにより持続可能な経営が実現します。環境に配慮した経営は、企業の社会的責任(CSR)としても評価され、企業イメージの向上にも寄与します 。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
この助成金は、生産性を向上させることで、「時間外労働の削減」、「年次有給休暇(計画的付与、時間単位の有給)」や「特別休暇」の整備に取り組む中小企業事業主に向けたものです。助成金の趣旨や要件を十分ご理解の上是非ご活用下さい。
助成金対象の事業主
次の項目の全てを満たす中小企業事業主が、助成金対象の事業主となります。
(1)労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業主であること ※「適用事業所」でないことにご注意下さい。
(2)「交付申請時点」で、「成果目標」1~3の条件を満たしていること。
(3)「交付申請時点」で、全ての対象事業場において「年5日の年次有給休暇の取得」に向けて就業規則等を整備していること。
成果目標の設定(成果目標1~3)
支給対象となる取組は、下記「成果目標」1~3の内、1つ以上選択し実施すること。
成果目標1
助成金受給を考えている中小企業事業主の全ての対象事業場において、令和5年度又は令和6年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと
→ そもそも時間外・休日労働がない事業場の場合は、36協定を労働基準監督署に提出していない可能性があるので、その場合は成果目標1の選択はできません。
成果目標2
助成金受給を考えている中小企業事業主の全ての対象事業場において、「年次有給休暇の計画的付与の規定」を新たに導入すること
成果目標3
助成金受給を考えている中小企業事業主の全ての対象事業場において、「時間単位の年次有給休暇の規定」を新たに導入し、かつ、下表の「特別休暇の規定」の内、いずれか1つ以上を新たに導入すること
特別休暇の規定
| 病気休暇 | |
| 教育訓練休暇 | |
| ボランティア休暇 | |
| 新型コロナウイルス感染症対応のための休暇 | |
| 不妊治療のための休暇 | |
| 時間単位の特別休暇 |
成果目標の設定(追加目標)
上記「成果目標1~3」に追加して、対象事業場で「指定する労働者」(注 全労働者ではない)の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うこと成果目標として追加できる。
支給対象となる取り組み
| 1 | 労務管理担当者に対する研修 研修には、勤務間インターバル制度に関するもの 及び 業務研修も含む |
| 2 | 労働者に対する研修、周知・啓発 |
| 3 | 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング |
| 4 | 就業規則・労使協定等の作成・変更 |
| 5 | 人材確保に向けた取組 |
| 6 | 労務管理用ソフトウェアの導入・更新 |
| 7 | 労務管理用機器の導入・更新 |
| 8 | デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新 |
| 9 | 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 例)小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など 但し、原則、パソコン、タブレット、スマートフォンは対象外 |
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の助成額は?
助成額について
上記「支給対象となる取り組み」の要した経費を、成果目標に達成状況に応じて支給額が決定されます。
次の内、いずれか低い方の額が助成金額となる。
(1)成果目標1~3の上限額(及び追加目標の賃金加算額の合計額)
(2)対象経費の合計額×補助率3/4
但し、①「常時使用する労働者数が30人以下」かつ②「支給対象の取組の内6~9で30万円を超える場合」は補助率は4/5となる。
成果目標1~3の上限額
成果目標1の上限額
| 事業実施後に設定する時間外労働時間数等 | 【事業実施前の設定時間数】 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場 | 【事業実施前の設定時間数】 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場 |
| 時間外労働時間数等を月60時間以下に設定 | 200万円 | 150万円 |
| 時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定 | 100万円 | ー |
成果目標2の上限額
新たに「年次有給休暇の計画的付与の規定」を導入する場合、上限額は25万円
成果目標3の上限額
新たに「時間単位の年次有給休暇の規定」と「特別休暇の規定(詳細は上記参照)」を導入する場合、上限額は25万円
追加目標の上限額
追加目標である「賃金額の引上げ」を加えている場合の加算額は、「指定した労働者」の賃金引上げ数の合計に応じて、下表のとおり、上記成果目標1~3の上限額に加算する。尚、引き上げ人数は30人が上限です。
常時使用する労働者数が30人を超える場合
| 引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
| 3%以上引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人当たり5万円 (上限150万円) |
| 5%以上引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人当たり8万円 (上限240万円) |
常時使用する労働者数が30人以下の場合
| 引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
| 3%以上引き上げ | 30万円 | 60万円 | 100万円 | 1人当たり10万円 (上限300万円) |
| 5%以上引き上げ | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人当たり16万円 (上限480万円) |
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の締め切りと事業実施期間
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の締め切り
締切日:申請の受付は令和6年(2024年)11月29日(金)まで(必着)です。
尚、支給対象事業主数は国の予算額に制約されるため、11月29日以前に受付を締め切る場合があるのでご注意下さい。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)の事業実施期間
「交付決定日」から令和7年(2024年)1月31日(金)までに取組を実施する必要があります。
用語説明
中小企業事業主
下記表の「A要件」又は「B要件」を満たすと「中小企業事業主」と判断されます。
| 業種 | A要件:資本又は出資額 | B要件: |
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 (医師が勤務する病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院) | 5,000万円以下 | 300人以下 |
| サービス業 (医師が勤務する病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院以外) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
まとめ
設備導入・更新は、人手不足の中で生産性を向上させるための重要な手段です。そのメリットは、効率化、コスト削減、品質向上、柔軟な生産対応、従業員のモチベーション向上など多岐にわたります。また、助成金を活用することで初期投資の軽減や競争力の強化、持続可能な経営の実現が可能となります。企業がこれらの施策を適切に活用することで、より強固な経営基盤を築き、未来への成長を確実なものとすることが期待されます。