パートやアルバイトを正社員に転換すると、国から1人あたり最大80万円の助成金を受け取れる制度があります。それが「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」です。人材不足に悩む中小企業にとって、採用コストを抑えながら人材を定着させられる有力な制度といえます。本記事では、令和8年度(2026年度)の最新情報をもとに、支給額・申請条件・申請の流れ・注意点をわかりやすく解説します。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?
キャリアアップ助成金は、厚生労働省が設けている国の助成金制度です。有期雇用労働者・短時間労働者など非正規雇用で働く従業員の待遇改善を支援する目的で創設されました。複数のコースが設けられていますが、最も広く活用されているのが「正社員化コース」です。
正社員化コースとは、アルバイト・パートタイム労働者・有期雇用契約社員など非正規雇用の従業員を正規雇用労働者(正社員)へ転換した事業主に対して助成金を支給する制度です。令和8年度(2026年度)現在も制度は継続しており、年度ごとに要件や助成額が見直されています。
令和8年度(2026年度)の主な変更点
令和8年度のキャリアアップ助成金(正社員化コース)では、前年度から引き続く重要な改正内容と新たな加算措置が加わっています。最新情報を正確に把握した上で申請準備を進めてください。
令和7年度(2025年4月)改正からの継続ポイント
令和7年4月の制度改正で導入された変更点は、令和8年度も継続して適用されています。
・重点支援対象者の新設:特定の要件を満たす有期雇用労働者を正社員化した場合、通常の支給額よりも高い「重点支援対象者」向けの支給額(中小企業で最大80万円)が適用されます。
・キャリアアップ計画書の届出制への移行:各コースの実施日の前日までに、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長へ提出(届出)することが必須の要件です。
・新規学卒者の取扱い変更:学校卒業後1年未満の新規学卒者は、正社員化コースの支給対象から除外されています。
令和8年度からの新たな変更点
令和8年度では「情報公表加算」の活用がより注目されています。正規雇用労働者への転換等に関する所定の情報を自社ウェブサイトまたは職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に公表した場合、加算措置を受けられます。公表内容に虚偽や不正行為があった場合は助成金全体が不支給または支給取消しの対象となります。一方で、公表内容に単なる不備があった場合は加算部分のみが不支給となりますが、管轄労働局の指導を受けて内容を修正すれば、次回の申請時に改めて加算申請を行うことが可能です。

支給額はいくら?正社員化コースの助成金額
正社員化コースの支給額は、転換する労働者の区分によって異なります。令和8年度(2026年度)時点の主な支給額は以下のとおりです。
| 転換の区分 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 有期雇用労働者→正規雇用労働者(通常) | 40万円 | 30万円 |
| 有期雇用労働者→正規雇用労働者(重点支援対象者) | 80万円(40万円×2期) | 60万円(30万円×2期) |
| 無期雇用労働者→正規雇用労働者 | 20万円 | 15万円 |
※加算措置が適用された場合、支給額はさらに上乗せされます。
重点支援対象者とは?
重点支援対象者とは、以下のいずれかに該当する労働者を指します。
- 雇い入れから3年以上継続して就業している有期雇用労働者
- 雇い入れから3年未満で、過去5年間に正規雇用労働者として働いた期間が通算1年以下かつ過去1年間正規雇用されていない有期雇用労働者
- 派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
加算措置の種類と加算額
要件を満たした場合、基本支給額に加えて以下の加算を受けられます。
(1)多様な正社員制度規定加算
新たに多様な正社員制度を就業規則等に規定した場合(中小企業40万円)
(2)正社員転換制度新規規定加算
就業規則等に正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換した場合(中小企業20万円)
(3)情報公表加算
正規雇用労働者への転換等に関する所定の情報を自社ウェブサイトまたは職場情報総合サイトに公表した場合(中小企業20万円)
基本支給額に加算措置を組み合わせた場合、中小企業では1事業所あたり最大140万円を超える受給も可能です。
正社員化コースの申請対象者とは?
対象となる事業主(中小企業事業主の範囲)
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請対象となる事業主の主な要件は以下のとおりです。
・雇用保険の適用事業主であること
・キャリアアップ管理者を配置していること
・キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長へ提出していること
・支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を滞納していないこと
・過去に労働関係法令の重大な違反がないこと
なお、中小企業事業主の範囲は業種によって異なります。製造業・建設業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下が目安となります。
対象となる労働者の条件
転換される従業員が助成金の支給対象となるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 転換前に同一事業主の下で有期雇用契約または無期雇用契約で継続雇用されていること
- 正社員とは異なる就業規則等の適用を受けており、転換前の雇用形態での就業が6か月以上あること
- 転換前6か月の賃金と比較して、転換後6か月の賃金が3%以上増額されていること
- 事業主または取締役の3親等以内の親族ではないこと
キャリアアップ助成金(正社員化コース)申請の流れ
申請の流れは全5ステップです。各ステップの順番を守ることが受給の絶対条件です。
STEP1:キャリアアップ計画書を作成・提出する
キャリアアップ管理者を選任した上で計画書を作成し、正社員化を実施する前日までに管轄の労働局へ届け出ます。計画書の提出前に転換を実施した場合は、支給対象外となります。
STEP2:就業規則に正社員転換制度を規定する
正社員転換を実施する日までに、就業規則等に転換規定を設け、施行しておく必要があります。常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則の変更内容を労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられており、支給申請までに届出を済ませてください。従業員が10人未満の事業所でも、就業規則の整備自体は本助成金申請の必須要件です。
STEP3:正社員への転換を実施する(賃金3%以上アップ必須)
就業規則等の転換規定に基づき、対象労働者を正規雇用労働者へ転換します。転換後6か月の賃金が転換前6か月の賃金と比較して3%以上増額されていることが必須要件であり、満たさない場合は助成金全体が不支給となります。
STEP4:転換後6か月間の継続雇用と賃金支払い
転換後、6か月間継続して雇用し続け、6か月分の賃金を支払います。この期間中も残業代の未払いや社会保険の不適切な適用がないよう、労働関係法令の遵守が審査されます。
STEP5:支給申請を行う(申請期限の厳守)
6か月分の賃金を支払った翌日から起算して2か月以内に、管轄の労働局へ支給申請を行います。なお、休日等の影響で賃金が本来の支給日より前倒しで支払われた場合は、実際の支払日の翌日が申請期間の起算日となる点に注意してください。申請期限を1日でも過ぎると受給できなくなります。申請には「雇用関係助成金ポータル」を通じた電子申請が利用できます(GビズIDの取得が必要)。
申請するときの注意点
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請では、手続き上のミスが不支給の直接の原因になります。以下の注意点を事前に確認してください。
・計画書の提出前に転換を実施してはならない:手順を逆にすると、受給できません。
・転換前後6か月の賃金を3%以上増額することが必須:この要件を満たさない場合は、加算の問題ではなく助成金全体が不支給となります。
・就業規則の変更届は労働基準監督署へ提出する:提出先を労働局と混同しないよう注意してください。
・申請期限を厳守する:前倒し支払い時の起算日の変動も含め、期限管理を徹底してください。
・書類の修正・再提出依頼には必ず応じる:対応しない場合は不支給となります。

支給されないケース
以下に該当する場合、申請しても支給されません。
・過去1年以内に労働基準法などの労働関係法令に違反した事業主
・支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を滞納している事業主
・過去の不正受給から5年以内の事業主
・実地調査への協力を拒否した事業主
・計画書提出前に正社員転換を実施した事業主
よくある質問(FAQ)
Q. パート・アルバイトでも対象になりますか?
有期雇用契約に限らず、正社員とは異なる就業規則等の適用を受けている無期雇用のパートタイム労働者なども、要件を満たせば対象となります。ただし、有期雇用からの転換と無期雇用からの転換では助成額が異なります。
Q. 個人事業主でも申請できますか?
雇用保険の適用事業主であれば、個人事業主でも申請可能です。
Q. 助成金は課税対象になりますか?
キャリアアップ助成金は法人税(所得税)の課税対象となります。受け取った年度の収益として計上してください。
Q. 申請から受給まで、どのくらいかかりますか?
申請から支給決定まで、おおむね6か月から1年程度を見込む必要があります。
Q. 申請手続きは自社で行う必要がありますか?
社会保険労務士に手続きを委託することが可能です。書類の不備リスクを回避するためにも、専門家への相談をお勧めします。
まとめ
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、非正規雇用の従業員を正社員へ転換した事業主に対して、基本額として中小企業の場合に最大80万円(重点支援対象者の場合)が支給される国の制度です。要件を満たした加算措置を組み合わせることで、さらに高額の受給も期待できます。令和8年度(2026年度)も制度は継続しており、情報公表加算など活用できる仕組みが充実しています。
一方で、手続きの順番や申請期限を誤った場合に受給できなくなるリスクもあります。社会保険労務士法人ファウンダーでは、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請サポートを行っています。就業規則の整備から計画書の作成・届出、支給申請まで一貫して対応しますので、まずはお気軽にご相談ください。
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