採用で失敗しない企業が実践している「求職者の本音」への向き合い方
<この記事のポイント>
・求職者が求人票で最も重視するのは「仕事内容」だが、「休日・休暇」「給与」への関心は企業側の想定を大きく上回る
・若年層も収入を強く重視しており、「お金では動かない」というイメージは統計上では根拠が薄い
・現在の雇用形態によって重視項目が異なるため、採用ターゲット別に訴求内容を変える必要がある
採用活動がうまくいかない会社に共通する「思い込み」
求人票を出しても応募が集まらない、内定を出しても辞退される——そのような悩みを抱える企業は少なくありません。原因の多くは、求職者の重視点と企業のアピール内容がかみ合っていない点にあります。
複数のアンケート調査を分析すると、企業が「伝えるべき」と考える情報と、求職者が「知りたい」と感じる情報の間には、明確なギャップが存在します。採用力を高めるには、このズレを数値で把握し、求人票や採用広報を見直すことが最初の一歩になります。
求職者が求人票で重視する項目——企業との認識ギャップ
レバレジーズ社が若年層求職者と採用企業の双方を対象に実施した調査では、求人票で重視する項目の優先順位に大きな差があることが明らかになっています。
| 項目 | 企業の重視割合 | 求職者の重視割合 |
| 仕事内容 | 31.8% | 25.9% |
| 会社概要・事業内容 | 25.8% | 11.5% |
| 休日・休暇 | 4.5% | 19.1% |
| 月給(高さ) | 0% | 8.6% |
| 賞与の有無 | 0% | 6.9% |
| 専門知識・技術習得機会 | 16.7% | 5.1% |
企業は「会社の概要や事業内容」を積極的に訴求しますが、求職者の関心は「どのくらい休めるか」「いくらもらえるか」といった生活直結の条件に集中しています。一方で、「仕事内容」は双方にとって最重要の項目である点は共通しています。
「若者はお金では動かない」は過去の話——最新データが示す実態
採用担当者の間で長年語られてきた「若い世代はやりがいを重視し、収入はあまり気にしない」というイメージがあります。しかし、最新の調査結果はその認識を覆すものです。
LASSIC社が2026年に実施した調査では、全年代・全就業形態で「仕事選びで最も重視するもの」の1位は「給与」であり、回答者の67.8%が最重視項目に挙げています。若年層だけが給与を重視しないという統計上の根拠は確認されていません。
さらに、転職体験サービスの集計では、「理想の仕事で給与とやりがいのどちらを重視するか」という設問に対し、2019年以降は「給与重視」が「やりがい重視」を上回り、その差は年々拡大しています。20〜30代の若年層で収入を重視する割合も高まり続けています。
新卒の入社意識調査では「事業内容」や「成長できる環境」が入社の決め手として5年連続トップという結果もあり、一見矛盾するように見えます。しかし正確には、「給与も仕事内容も働きやすさも、すべてセットで重視する」という構造が実態です。企業側は「やりがい・成長性」を訴求するだけでなく、「収入条件」を明示する姿勢が求められます。
採用ターゲット別に異なる「重視ポイント」の全体像
求職者の重視項目は、現在の雇用形態によって異なります。ターゲット層を明確にしたうえで訴求内容を変えることが、採用効率の向上につながります。
現在、正社員として転職活動をしている人
1位:仕事内容(25.6%)
2位:給与(22.9%)
最も重視しない項目:応募条件(6.8%)
現職の経験やスキルを活かせるかどうかを最優先に確認します。「どんな仕事をするか」を丁寧に記載したうえで、「年収水準・昇給の仕組み」を具体的に示すことが有効です。
現在、無職(離職中・求職中)の人
1位:仕事内容(26.3%)
2位:休日・休暇(17.8%)
最も重視しない項目:福利厚生(10.7%)
給与よりも「無理なく長く続けられるか」に関心が向く傾向があります。離職理由によってさらに優先項目が変わるため、画一的な訴求は逆効果になりかねません。
現在、派遣・契約社員として正社員を目指している人
1位:仕事内容(24.4%)
2位:給与(23.2%)
最も重視しない項目:会社概要・事業内容(10.4%)
正規雇用への移行に際し、収入の安定を強く意識します。会社の沿革や理念よりも、「具体的な業務内容」と「収入条件」を前面に出した求人票が刺さりやすくなります。
現在、アルバイトから正社員を目指している人
1位:仕事内容(26.7%)
2位:給与(18.6%)
最も重視しない項目:会社概要・事業内容(11.7%)
「未経験歓迎」「研修・フォロー体制あり」「通いやすい勤務地」といった条件を明記するだけで、応募ハードルが大きく下がります。企業理念の長文説明よりも、入社後のイメージが持てる情報提供が効果的です。
新卒採用でも「生活の安定」が選社の軸になっている
マイナビが実施した大学生就職意識調査では、企業選択で最も重視する項目として「安定している会社」が6年連続で首位を占めています。「行きたくない会社」の上位には「ノルマがきつそうな会社」「転勤が多い会社」が挙がっており、過度な負担を避けたいという意識が鮮明です。
一方、ジェイック社が2026年度新入社員を対象に行った調査では、入社の決め手として「事業内容への共感」と「成長できる環境」が5年連続でトップという結果が示されています。近年は「経営者志向」や「充実した家庭生活」を同時に追求するキャリア観も高まっており、仕事と私生活の両立を重視する傾向が強くなっています。
新卒採用においては、「安定性・働きやすさ」に加えて「事業内容の納得感」と「成長環境の提示」が応募意欲を高める要素になります。どれか一つに偏った訴求では、候補者の多様なニーズに応えられません。
採用力を高めるために企業が取り組むべき3つの改善点
以上のデータを踏まえると、採用活動で成果を出すために優先すべきアクションは次の3点に集約されます。
採用改善のための3つのアクション
① 求人票に「休日・休暇」と「給与の詳細」を具体的に記載する
求職者の約2割が「休日・休暇」を重視する一方、企業の記載率は極めて低水準です。有給取得率・年間休日数・賞与の実績額などを数値で明示するだけで、応募数に直結します。
② 採用ターゲットを「現在の雇用形態」で絞り込み、訴求内容を変える
正社員転職者、無職からの就職希望者、非正規雇用からの正社員志望者では、重視ポイントが異なります。すべての層に同じメッセージを送ることは、訴求力の低下につながります。
③ 「やりがい・成長」の訴求に「収入・働き方」の情報をセットで添える
若年層・新卒層であっても、収入条件を軽視しているわけではありません。事業の魅力を伝えると同時に、「安心して生活できる条件」を具体的に示す構成が採用競争力を高めます。
まとめ——求職者のリアルな視点から採用を設計し直す
採用市場で選ばれる企業になるためには、「伝えたい情報」ではなく「求職者が知りたい情報」を起点に採用広報を組み立て直すことが不可欠です。
調査データが示す通り、求職者は「仕事内容」を最重視しながら、「給与」「休日・休暇」「勤務地」といった生活基盤に関わる条件を企業側の想定以上に重視しています。若年層でも収入重視の傾向は強まっており、「やりがい訴求」だけでは採用効率は上がりません。
ターゲット層の現在の雇用形態を把握し、それぞれの重視項目に合わせた情報設計を行う——その一手間が、求職者との接点の質を大きく変えます。採用課題を抱えている企業ほど、まず「求職者の目線でわが社の求人票を読み直す」ことから始めることをお勧めします。
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