採用面接でうっかり聞いてしまうと、企業が法的リスクを負います
採用難の時代ですが、一次面接から内定通知を受ける前に選考辞退する理由については、下表のような情報があります。
| 順位 | 辞退理由(一次面接後〜内定前) | 割合 |
| 1位 | 給与が希望と合わなかった | 28.8% |
| 2位 | 仕事の中身が希望と合わなかった | 25.5% |
| 3位 | 勤務地が希望と合わなかった | 17.5% |
| 4位 | 職場の雰囲気が良くなかった | 14.2% |
| 5位 | 面接官の印象・対応が良くなかった | 13.2% |
今回は、5位の「面接官の印象・対応が良くなかった」について、面接時のNG質問について解説したいと思います。
皆さんは、ご存知でしょうか?
採用面接では、実は「聞いてはいけない質問」が法律で定められています。知らずに面接で質問してしまうと、応募者から訴えられるリスクがあります。さらに、採用時の年齢制限についても、法律の定めを守らないと違法になる場合があります。
この記事では、社会保険労務士の視点から、採用面接でNGとなる質問の具体例と年齢制限のルールを整理します。採用担当者として最低限知っておくべき法的知識を、わかりやすくお伝えします。
採用面接で聞いてはいけない質問が存在する理由
採用面接で禁止される質問が生まれた背景には、「就職差別の撤廃」という社会的な要請があります。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、応募者の能力・適性以外の要素で採否を判断することを禁じています。
採用選考の基本原則は、次の2点です。
原則①:応募者の基本的人権を尊重すること
原則②:応募者の適性・能力のみを基準に採用の判断をすること
この原則に反する質問は、たとえ悪意がなくても「差別的な採用選考」とみなされます。採用担当者が善意で聞いた質問であっても、法的リスクを生む可能性があります。

採用面接で絶対に聞いてはいけない質問の具体例
厚生労働省が定める「就職差別につながる恐れのある質問」は、大きく3つのカテゴリーに分類されます。
① 本人の適性・能力と無関係な個人情報
| 質問の種類 | 具体的な質問例 |
|---|---|
| 出生地・家族の出身地 | 「ご両親はどちらのご出身ですか?」 |
| 家族構成・家族の職業 | 「ご両親の仕事は何をされていますか?」 |
| 住宅環境 | 「持ち家ですか、賃貸ですか?」 |
| 資産・家庭の経済状況 | 「ご自宅は一戸建てですか?」 |
| 宗教・支持政党 | 「特定の宗教を信仰していますか?」 |
家族の状況や生まれた場所は、仕事の能力とは一切関係がありません。これらを採用の判断材料にすることは、差別的選考に当たります。
② 思想・信条に関する質問
「あなたの政治的な考え方を教えてください」「労働組合についてどう思いますか」といった質問も禁止されています。労働基準法第3条では、国籍や信条(思想)などを理由とした労働条件の差別を禁じています。この法の趣旨を踏まえ、厚生労働省の指針でも採用選考で思想・信条を尋ねることは固く禁じられています。
「将来結婚したら仕事を続けますか」という質問も、女性への差別的意図があるとみなされるため、避けなければなりません。
③ 健康状態に関する不適切な質問
「精神疾患の治療歴はありますか」「過去にうつ病になったことはありますか」という質問は、障害者雇用促進法の観点から問題になる場合があります。業務遂行に直接影響する健康情報のみ、必要最低限の範囲で確認するのが原則です。
④ 戸籍・国籍に関する質問
「戸籍謄本を提出してください」「帰化された方ですか」という質問も、就職差別につながる恐れがあるとして厚生労働省が禁止しています。在留資格の確認は採用後の手続きとして行うものであり、選考段階での確認は必要ありません。外国籍の方への対応で迷う場合は、是非ご相談下さい。
では、採用面接で「聞いてよい質問」とは何か
採用選考で聞いてよい質問は、「業務の遂行能力・適性の確認に必要な事項」に限られます。具体的には、次のような質問が適切です。
・職務経験・スキル:「これまでの業務でどのような経験を積まれましたか?」
・志望動機・仕事への意欲:「当社を志望した理由を教えてください」
・勤務条件の確認:「残業が発生する場合がありますが、対応は可能ですか?」
・資格・免許の有無:「業務に関連する資格はお持ちですか?」
勤務条件の確認は、業務に直結する内容であれば問題ありません。ただし「子どもが生まれたら辞めますか」のように、特定の属性を前提とした聞き方は差別的とみなされます。

採用時の年齢制限には法律上の厳格なルールがあります
「35歳以下の方を募集」「定年後の再就職者は不可」といった年齢制限を求人に記載する場合、雇用対策法(現・労働施策総合推進法)に基づくルールが適用されます。
原則:年齢制限は禁止
労働施策総合推進法第9条は、事業主が労働者の募集・採用において、年齢に関係なく均等な機会を与えることを義務付けています。つまり、年齢を理由に応募を制限することは、原則として違法です。
例外:年齢制限が認められる6つのケース
ただし、以下の6つの場合に限り、年齢制限を設けることが認められています。
| 例外の種類 | 内容の説明 |
|---|---|
| ① 定年年齢以下への限定 | 定年が60歳の会社が60歳未満を募集する場合 |
| ② 長期勤続によるキャリア形成のため | 若年層(概ね35歳未満)に限定した募集 |
| ③ 技能・ノウハウの継承のため | 特定の年齢層(30代など)への限定募集 |
| ④ 就職氷河期世代への雇用機会の提供 | 氷河期世代(概ね35~55歳)への限定 |
| ⑤ 特定の職種における年齢制限 | 芸能・スポーツ等で年齢が本質的な要件の場合 |
| ⑥ 法律で年齢制限がある業務 | 18歳未満禁止の深夜業など、法定の制限がある場合 |
これらの例外に該当しない場合、求人票に年齢制限を設けることは違法になります。ハローワークへの求人申込みでも、例外理由を明記しなければ受理されません。
年齢制限に違反した場合のリスク
違反が発覚した場合、行政機関からの指導・勧告の対象になります。さらに、不当に応募を拒否された求職者から損害賠償を請求されるリスクもゼロではありません。採用コストの無駄を防ぐためにも、求人段階からのルール遵守が不可欠です。
採用トラブルを防ぐために、今すぐできる3つの対策
対策① 面接官向けの事前研修を実施する
採用担当者が禁止質問を知らないまま面接をおこなうことが、トラブルの最大の原因です。面接前に「してはいけない質問リスト」を共有し、確認する習慣をつけましょう。特に複数名で面接を行う場合、全員が同じ知識水準を持つことが重要です。「自分だけ知っていればよい」という考え方では、組織全体のリスクを下げることができません。
対策② 面接シートを標準化する
面接で聞く項目をあらかじめシートに落とし込み、担当者によって質問内容がばらつかないようにします。標準化されたシートには、禁止質問が含まれないよう、社労士などの専門家にチェックを依頼することをお勧めします。シートを活用することで、面接後の記録・振り返りもしやすくなり、採用基準の一貫性も保てます。
対策③ 求人票の年齢記載を専門家と確認する
求人票に年齢条件を記載する場合、例外事由に該当するかどうかを確認してから掲載します。根拠のない年齢制限は、ハローワークの審査段階で修正を求められる場合もあります。求人票は一度掲載したら終わりではなく、法改正のたびに内容を見直す必要があります。年に一度、社労士による求人票の定期チェックを受けることをお勧めします。
まとめ:採用の法的リスクは、知ることで防げます
採用面接での禁止質問と年齢制限のルールは、決して難しい内容ではありません。正しい知識を持ち、面接シートと求人票を整備するだけで、ほとんどのリスクを回避できます。
「知らなかった」では済まされないのが採用の法的リスクです。特に採用活動が活発になる時期こそ、改めてルールを確認する機会にしてください。
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