社会保険適用拡大の今後のスケジュールが、2025年6月の年金制度改正法の成立により確定しました。 「2026年10月に何が変わるの?」「うちの会社はいつから対象になるの?」──そんな疑問を持つ経営者・人事担当者に向けて、社会保険適用拡大の今後の全スケジュールと企業が今すぐ取り組むべき実務対応を社会保険労務士がわかりやすく解説します。
社会保険適用拡大の今後:確定スケジュール一覧
社会保険適用拡大は、今後2035年にかけて段階的に進みます。現時点で確定しているスケジュールは以下の通りです。
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026年4月 | 被扶養者認定の基準が「労働契約書の年収見込み」へ変更。大学生等(19〜23歳未満)の扶養認定上限が150万円に引き上げ |
| 2026年10月 | 「賃金月額8.8万円以上(106万円の壁)」という賃金要件を完全撤廃 |
| 2027年10月 | 企業規模要件を「51人以上」→「36人以上」に引き下げ |
| 2029年10月 | 企業規模要件を「21人以上」に引き下げ。個人事業所(飲食・美容・農業等)への強制適用開始 |
| 2032年10月 | 企業規模要件を「11人以上」に引き下げ |
| 2035年10月 | 企業規模要件を完全撤廃。全事業所が適用対象 |
「うちはまだ関係ない」と思っていても、事業拡大で正社員が1人増えた瞬間に適用対象となる可能性があります。今後のスケジュールを正確に把握しておくことが不可欠です。

【最大の変更点】2026年10月、「106万円の壁」が消滅する
社会保険適用拡大の今後において、最も影響が大きいのが2026年10月の賃金要件撤廃です。
現行では、パート・アルバイトが社会保険に加入するには「賃金月額8.8万円(年収約106万円)以上」という条件を満たす必要がありました。しかし2026年10月以降は、この条件がなくなります。
2026年10月以降の加入条件(変更後)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2ヶ月を超える見込み
- 学生でないこと
- 企業規模要件(段階的に撤廃)
つまり、週20時間以上働いていれば、月収5万円でも原則として社会保険の加入対象となります。「106万円の壁」は消滅し、今後は「週20時間の壁」が新たな最重要ラインとなります。
なぜ撤廃されるのか?
全国の最低賃金が上昇した結果、「週20時間働くだけで月額8.8万円を超える」状態がすでに広がっています。賃金要件を別途設ける意義が薄れたこと、さらに「働き控え」を解消して人手不足を解決する国策的な狙いもあります。
「130万円の壁」は今後も残る。2026年4月の新ルールに注意
社会保険適用拡大の今後を考えるうえで、「106万円の壁と130万円の壁は別物」という点を必ず押さえてください。
- 106万円の壁:自分の勤め先の社会保険に自ら加入する義務が発生するライン → 2026年10月に撤廃
- 130万円の壁:配偶者や親の社会保険の扶養から外れるライン → 今後も存続
さらに、2026年4月からは**被扶養者認定の判定基準が「労働契約書の年収見込み」**に変わります。繁忙期の残業などで一時的に年収130万円を超えても、契約書上の見込み年収が130万円未満であれば、原則として直ちに扶養から外れなくなります。雇用契約書の整備が急務です。
企業が今すぐ取り組むべき5つのステップ
社会保険適用拡大の今後に備え、企業は以下の5ステップで準備を進めてください。
ステップ1:対象者のリストアップとコスト試算
週20時間以上働くパート・アルバイトの人数を確認し、全員が加入した場合の法定福利費増加額をシミュレーションします。
ステップ2:労働契約書の全面見直し
2026年4月の被扶養者認定変更に備え、週の所定労働時間・年収見込みを明記した契約書フォーマットへ改訂します。
ステップ3:従業員への説明会と個別面談
社会保険加入のメリット(厚生年金の上乗せ、傷病手当金、出産手当金など)を丁寧に説明し、「週20時間以上働くか否か」の意向をヒアリングします。
ステップ4:手続きフローの電子化
大量の「被保険者資格取得届」を期限内(事実発生から5日以内)に提出するため、e-Gov電子申請やクラウド型労務管理システムの導入を今から進めます。
ステップ5:助成金の活用
「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」では、新たに加入するパートの手取り減少を防ぐ賃上げ等に対し、労働者1人あたり最大50万円が助成されます。国の支援策を最大限に活用してください。
まとめ:社会保険適用拡大の今後は「全事業所適用」が最終ゴール
社会保険適用拡大の今後は、2026年の賃金要件撤廃を皮切りに、2035年の企業規模要件完全撤廃まで続く長期的な制度変革です。「まだ先の話」と油断していると、いざ施行時に予期せぬ人件費高騰や従業員の離職リスクを招きかねません。
今から対象者の把握・労働契約書の整備・助成金の活用を進めることが、企業の持続的成長につながります。制度設計や就業規則の改定については、社会保険労務士への早めの相談が最も確実な近道です。
現在、パートタイム労働者等の短時間労働者を新たに社会保険に加入させた事業主が受給できるキャリアアップ助成金として、「年収の壁」対策となる制度が用意されています。
特に最新の重要トピックとして、2025年(令和7年)7月1日より、これまでの制度が大幅に拡充された新コース「短時間労働者労働時間延長支援コース」がスタートしています。
受給額を最大化するための最新情報と、現行制度との関係について解説いたします。
1. 【新設】短時間労働者労働時間延長支援コース(2025年7月1日~)
これまで労働時間の延長を伴う社会保険加入は最大30万円等の助成でしたが、この新コースにより、小規模企業(従業員30人以下)であれば労働者1人あたり最大75万円へと助成額が大幅に引き上げられました。
【受給額(1人あたり)】 本コースは1年目と2年目の2段階で助成金が支給されます。対象人数の上限はありません。
- 小規模企業(30人以下):最大75万円(1年目50万円 + 2年目25万円)
- 中小企業:最大60万円(1年目40万円 + 2年目20万円)
- 大企業:最大45万円(1年目30万円 + 2年目15万円)
【主な支給要件】
- 1年目の取組: 週所定労働時間を一定時間(例:4時間以上)延長するか、または労働時間の延長(1時間〜4時間未満)と基本給の増額(5%〜15%以上)を組み合わせて社会保険に加入させること。
- 2年目の取組: 1年目の取組後、さらに労働時間を2時間以上延長するか、基本給をさらに5%以上増額(または昇給・賞与・退職金制度を適用)すること。
2. 【現行】社会保険適用時処遇改善コース(〜2026年3月31日までの時限措置)
すでに2023年10月から開始されているコースであり、引き続き利用可能です。労働時間を延長するのではなく、「手当の支給」や「賃上げ」によって手取り収入の減少を防ぐ場合はこちらを活用します。
【手当等支給メニューの受給額】
- 中小企業:最大50万円(1年目20万円 + 2年目20万円 + 3年目10万円)
- 大企業:最大37.5万円
【主な支給要件】 新たに社会保険に加入させた際、1年目・2年目は労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額等の15%以上)の手当(社会保険適用促進手当など)支給や賃上げを行い、3年目に基本給を18%以上増額させることで助成されます。
3. 現行コースから新コースへの「切り替え申請」も可能
現在すでに「社会保険適用時処遇改善コース(労働時間延長メニューまたは併用メニュー)」のキャリアアップ計画書を提出し、取り組みを進めている事業主であっても、要件を満たしていれば2025年7月以降の新コース(短時間労働者労働時間延長支援コース)へ切り替えて申請し、より高額な助成を受けることが可能です。この切り替えにあたっては、新たな計画書や変更届の再提出は不要とされています。
専門家からのアドバイス・注意点
キャリアアップ助成金を受給するための最大の鉄則は、社会保険に加入させる日や労働時間を延長する日などの「取り組みを実施する前日」までに、管轄の労働局等へ『キャリアアップ計画書』を提出しておくことです。事後提出は一切認められず、助成金が受給できなくなります。
まずは自社の従業員規模と、パートタイム労働者の方々の働き方の希望(労働時間を延ばしてしっかり稼ぎたいか、時間はそのままで手当でカバーしてほしいか)を確認し、「短時間労働者労働時間延長支援コース」と「手当等支給メニュー」のどちらを活用するのが最適かをご検討いただくことをお勧めいたします。
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