はじめに
男性育休の取得率が急上昇する現代において、制度理解と適切な活用方法を知ることは極めて重要です。令和5年度には30.1%まで取得率が向上したものの、「取るだけ育休」という課題も浮上しています。本記事では、男性育休の基本から企業への影響まで、包括的に解説いたします。
男性育休とは?基本制度を理解しよう
制度の概要と法的根拠
男性育休は、育児・介護休業法に基づいて男性従業員が取得できる休業制度です。子の出生から1歳(最長2歳)まで取得可能で、2022年4月からは「産後パパ育休」も新設されました。この制度により、出生後8週間以内に最大4週間の休業を分割取得できるようになっています。
取得可能期間と申請方法
育児休業の申請は、原則として休業開始の1か月前までに会社へ届け出る必要があります。ただし、産後パパ育休については2週間前まで可能です。期間については、夫婦で交代しながら取得することもでき、柔軟な制度設計となっております。
男性育休の取得率と現状
統計データから見る現状
厚生労働省の調査によると、男性育休取得率は令和元年度の7.48%から令和5年度には30.1%へと大幅に増加しました。しかし、この数字の裏には「取るだけ育休」という問題が潜んでいます。
「取るだけ育休」の実態
コネヒト株式会社の調査では、育休中の男性が家事・育児に従事する時間が3時間以下という回答が44.5%に達しています。つまり、取得はしているものの実際の育児参加が十分でないケースが多く存在するのです。
男性育休期間の選び方とおすすめプラン
期間設定の考え方
男性育休の期間設定には、家庭の状況と職場環境の両方を考慮する必要があります。短期間でも集中的に育児に関わることで、夫婦の役割分担を確立できるでしょう。
具体的な期間プラン
1週間プラン:出産直後のサポートに集中 1ヶ月プラン:産褥期の妻をしっかりサポート
3ヶ月プラン:育児スキルを本格的に習得 1年プラン:夫婦で育児を完全に分担
それぞれのプランには異なるメリットがあり、家庭の事情に応じて選択することが重要です。
男性育休の給付金と経済的サポート
育児休業給付金の仕組み
育児休業給付金は、休業開始から180日間は賃金の67%、それ以降は50%が支給されます。さらに、社会保険料の免除もあるため、実質的には手取りの約80%程度を確保できるのです。
政府の給付率向上計画
政府は育休開始から6ヶ月間の給付率を80%に引き上げ、手取りで約10割にする方針を検討しています。経済的な不安を軽減し、より多くの男性が育休を取得しやすい環境を整備する狙いがあります。
企業の助成金制度
企業が男性育休を推進する場合、「両立支援等助成金」の活用が可能です。出生時両立支援コースでは、男性の育休取得者が出た企業に対して助成金が支給されます。
企業が直面するリスクと対策
「選ばれない企業」リスク
男性育休を積極的に推進しない企業は、優秀な人材から選ばれないリスクを抱えています。特に、ワークライフバランスを重視する若い世代にとって、育休制度の充実は就職先選択の重要な判断基準となっているからです。
人材流出の危険性
育休制度が整っていない企業では、従業員のエンゲージメント低下や離職率上昇のリスクがあります。結果として、長期的な人材不足に陥る可能性が高まるでしょう。
ESG投資への影響
ダイバーシティが推進されていない企業は、ESG投資の観点からも評価が下がります。投資家からの資金確保が困難になり、企業の持続的成長に悪影響を及ぼすかもしれません。
企業が講じるべき具体的対策
経営トップのコミットメント
企業トップが男性育休推進の明確な意思を表明することが最も重要です。経営者の強いメッセージにより、社内全体に育休取得を歓迎する雰囲気が醸成されます。
業務効率化と属人化解消
育休取得者が出ることを前提とした業務体制の構築が必要です。業務の見える化、マニュアル作成、多能工化の推進により、誰でも代替可能な体制を目指しましょう。
復帰支援制度の充実
育休からのスムーズな復職を支援するため、柔軟な働き方の選択肢を提供することが重要です。短時間勤務、テレワーク、フレックスタイムなどの制度整備が求められます。
成功事例から学ぶベストプラクティス
株式会社コーソルの取り組み
同社では育休取得者による座談会や社内セミナーを実施し、取得率を16.7%から62.5%まで向上させました。従業員の生の声を共有することで、心理的ハードルの軽減に成功しています。
株式会社技研製作所の改革
女性従業員主体のプロジェクトが男性育休推進を主導し、取得率0%から30%への劇的な改善を実現しました。平均取得日数も110.2日と長く、実質的な育児参加を促進している事例です。
個人が準備すべきポイント
パートナーの理解と協力
出産後の身体変化について正しく理解し、パートナーとの具体的な役割分担を事前に話し合うことが大切です。産褥期の重要性を認識し、適切なサポートを提供しましょう。
育児スキルの事前習得
育休期間を有効活用するため、育児に関する基本的な知識とスキルを事前に身につけることをおすすめします。実際の育児に参加する準備を整えておけば、より充実した育休期間を過ごせるでしょう。
まとめ:男性育休の未来への展望
男性育休は、単なる制度利用を超えて家族の絆を深める貴重な機会です。企業にとっても従業員満足度向上と人材確保の重要な戦略となります。政府目標である2030年度85%の取得率達成に向けて、個人と企業の両方が意識改革を進めることが不可欠でしょう。
真の意味での男性育休推進により、社会全体がより良い方向へ変化していくことを期待しています。制度を正しく理解し、適切に活用することで、すべての家族が幸せな育児期間を過ごせる社会の実現を目指していきましょう。
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