年収の壁とは?働く人なら知っておくべき基本知識
年収の壁とは、給与収入が一定額を超えることで税金や社会保険料の負担が発生する境界線のことです。パートやアルバイトで働く方にとって、働き方を決める重要な判断材料となっています。
従来から存在していた年収の壁には、主に6つの種類がありました。しかし、2025年の制度改正により、これらの基準が大幅に変更されています。新しい制度を理解することで、より効率的な働き方を選択できるようになります。
2025年改正で激変!新しい年収の壁一覧
所得税の壁が大幅に変更
従来の103万円の壁が160万円に拡大
最も注目すべき変更点は、所得税がかからない上限額の引き上げです。基礎控除が48万円から95万円に、給与所得控除が55万円から65万円に引き上げられました。その結果、年収160万円まで所得税が発生しない新制度が誕生しています。
ただし、所得税上の扶養に入れる基準は123万円に変更されました。つまり、自分の所得税を考えるなら160万円、家族の扶養に入ることを重視するなら123万円という、2つの基準を使い分ける必要があります。
学生アルバイト向け特定親族特別控除を新設
19歳から23歳の学生を対象とした新しい控除制度も始まりました。従来は親が特定扶養控除を受けるために子の年収を103万円以下に抑える必要がありましたが、新制度では150万円まで満額控除を受けられます。
住民税の壁は110万円に移動
住民税が発生する基準も100万円から110万円に引き上げられました。給与所得控除の増額に伴い、住民税の非課税限度額も自動的に上昇しています。ただし、住民税は翌年度課税のため、2026年度分から影響が現れます。
社会保険の壁は複雑な変化
106万円の壁は実質的に変化
社会保険加入の要件である月額8.8万円(年収106万円相当)の賃金要件が撤廃される予定です。最低賃金の上昇により、この基準が実質的な意味を失ったためです。
一方で、週20時間以上の労働時間要件は継続されます。企業規模要件も段階的に縮小され、2035年には10人以下の企業まで対象が拡大されます。
130万円の壁は継続
年収130万円を超えると扶養から外れる制度は変更されていません。ただし、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」により、一時的な収入増加であれば最長2年間扶養にとどまれる特例を設けています。
新制度のメリットとデメリットを徹底分析
働く人にとってのメリット
働き控えの解消による収入増加
年収の壁引き上げにより、これまで意図的に労働時間を制限していた「働き控え」が解消されます。野村総合研究所の試算では、有配偶パート女性が約20万円多く稼げるようになると予測されています。
手取り収入の実質的な増加
所得税の課税最低限引き上げにより、多くの労働者の手取り収入が増加します。物価高が続く中で、家計負担の軽減効果が期待できます。
社会保障の充実
社会保険の適用拡大により、厚生年金や健康保険の保障を受けられる労働者が増加します。将来の年金受給額増加や、傷病手当金などの給付も手厚くなります。
注意すべきデメリット
社会保険料負担による手取り減少リスク
最も大きな懸念は、社会保険料の自己負担が発生することです。年収が一定額を超えると、社会保険料の支払いにより一時的に手取りが減少する可能性があります。
企業の人件費負担増加
企業側にとっては、社会保険料の折半負担が増えることで人件費が上昇します。特に中小企業では、雇用戦略の見直しが必要になるかもしれません。
年収の壁攻略法|働き方別ベストプランを提案
パート主婦の場合
123万円以内で扶養を維持
配偶者の扶養に入り続けたい場合は、年収123万円以内に収めることが重要です。従来の103万円から20万円拡大されたため、働く時間を増やしやすくなりました。
160万円まで所得税なしで稼ぐ
所得税を気にせず稼ぎたい場合は、年収160万円までなら課税されません。ただし、配偶者の扶養から外れる可能性があるため、世帯全体での損益計算が必要です。
学生アルバイトの場合
150万円まで親の控除を維持
19歳から23歳の学生なら、年収150万円まで親が特定親族特別控除の満額を受けられます。従来の103万円から大幅に緩和されたため、より多く働けるようになりました。
フリーターの場合
社会保険加入を前向きに検討
年収が130万円を超える場合は、社会保険への加入を検討しましょう。一時的に手取りは減りますが、将来の年金受給額増加や手厚い保障を考えると、長期的にはメリットが大きくなります。
企業が対応すべき実務ポイント
従業員への情報提供
制度変更の内容を正確に従業員に伝えることが重要です。特に年末調整の際は、新しい申告書の提出が必要になるため、早めの準備が求められます。
労働時間管理の見直し
年収の壁引き上げにより、従業員の労働時間が増加する可能性があります。適切な労働時間管理と、社会保険加入対象者の把握が必要です。
相談体制の整備
従業員からの質問に適切に答えられるよう、相談窓口の設置やFAQの作成を検討しましょう。制度が複雑なため、丁寧な説明が求められます。
まとめ|新しい年収の壁を活用した働き方改革
2025年の年収の壁改正は、働く人にとって大きなチャンスです。所得税の課税最低限が160万円に引き上げられ、学生向けの控除制度も拡充されました。
しかし、社会保険の130万円の壁は継続されるため、働き方の選択には注意深い検討が必要です。個人の状況に応じて最適な年収ラインを設定し、長期的な視点で働き方を決めることが重要になります。
新制度を正しく理解し、賢く活用することで、より豊かな働き方を実現できるでしょう。制度の詳細や最新情報については、国税庁や厚生労働省の公式サイトで確認することをおすすめします。
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