外国人材の採用や雇用を検討されている企業は、国や地方自治体から様々な助成金や補助金、支援制度を活用できる可能性があります。これらの制度は、外国人労働者の採用から定着までの費用負担を軽減し、適切な雇用環境を整備することを目的としています。
助成金と補助金の基本的な違い
「助成金」と「補助金」はどちらも返済不要の給付金ですが、以下の点で異なります。
1,助成金
(1)財源: 雇用保険料(事業主と労働者が納める保険料)/管轄: 厚生労働省。
(2)目的: 雇用の維持・創出、労働者の処遇改善、職場環境の整備、人材育成など、雇用関連の取り組みを支援。
(3)特徴: 定められた要件を満たせば、比較的スムーズに審査が進み支給される傾向があります。通年で募集されることが多いです。
2,補助金
(1)財源: 税金(一般会計)/ 管轄: 経済産業省や各地方自治体など。
(2)目的: 特定の事業や産業の振興、技術開発などを促進。
(3)特徴: 事業計画の内容が厳密に審査され、優れた事業のみが採択される選考形式です。募集期間が数週間と短く、年度ごとに内容が変わる可能性があります。
多くの助成金や補助金は「後払い」であり、取り組みを実施し、条件を満たしたことが確認された後に支給されることが多いです。その為、助成金や補助金が絶対支給されることを前提とせずに、資金計画を立てる姿勢は必要かもしれません。
外国人雇用で活用できる国の主要な助成金制度
厚生労働省が管轄する主な助成金には、以下のものがあります。
1,人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
(1)概要:外国人労働者が日本の労働法制や雇用慣行に不慣れであることから生じるトラブルを防止し、職場定着を促進するために、就労環境の整備を行う事業主を支援する制度です。
(2)対象事業主: 雇用保険の被保険者となる外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用し、「外国人雇用状況届出」を提出している事業主で、認定を受けた就労環境整備計画に基づき措置を実施する者。計画期間終了後の外国人労働者の離職率が15%以下であることも要件です。
(3)対象措置の例: 雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化、苦情・相談体制の整備、一時帰国のための休暇制度の整備、社内マニュアル・標識類等の多言語化。
(4)支給額: 1制度導入につき20万円(上限80万円)が支給されます。賃金要件(外国人労働者の基本賃金が施策実施日から1年以内に5%以上増加すること)を満たす場合は対象経費の3分の2(上限72万円)、満たさない場合は2分の1(上限57万円)が支給されます。
(4)対象経費の例: 通訳費、翻訳機器導入費(雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要なもの)、翻訳料(社内マニュアル・標識類等の多言語化費用を含む)、弁護士・社会保険労務士等への委託料、社内標識類の設置・改修費。
2,人材開発支援助成金(人材育成コース)
(1)概要: 事業主が労働者に専門的な知識や技能を習得させるために職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
(2)対象訓練: OFF-JT(職場外訓練)やOJT(職場内訓練)との併用、eラーニング、通信制など多岐にわたります。
(3)支給額: 中小企業の場合、経費助成率は45%、賃金助成は1人1時間あたり760円です。eラーニングや通信制による訓練では経費助成のみで、訓練時間に応じて10万円から50万円が定額で支給されます。
3,トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
(1)概要: 職業経験が不足し、就職が困難な求職者を無期雇用への移行を前提に一定期間(原則3ヶ月間)試用雇用する企業を支援する制度です。外国人求職者の採用においても、言語や文化の違いから生じる不安を軽減し、相互理解を深める期間として活用できます。
(2)対象求職者: 無期雇用を希望し、週30時間以上の勤務を希望している者で、ハローワークや民間職業紹介機関に求職申込をしている者。過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している者や、1年以上就労経験がない者などが対象となります。
(3)支給額: 対象者1人あたり月額4万円(母子家庭の母または父子家庭の父の場合は月額5万円)が最長3ヶ月間支給されます。
4,キャリアアップ助成金
(1)概要: 有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための制度です。
(2)正社員化支援: 非正規雇用労働者を正社員に転換することを促進します。中小企業の場合、有期雇用から正社員への転換で80万円(40万円×2期)の助成があります。ただし、外国人技能実習生や特定技能第1号の労働者は対象外です。
(3)処遇改善支援: 賃金規定の改定や共通化、賞与・退職金制度の導入など、非正規雇用者の待遇改善を目的とします。外国人労働者も広く対象となります。
(4)生産性要件: 「生産性要件」を満たすことで、より高額の助成を受けられます。
5,雇用調整助成金
(1)概要: 経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた際に、従業員の雇用を維持するために休業手当の支払いや出向を行う事業主を支援する制度です。国籍を問わず適用されるため、外国人労働者の雇用維持にも活用できます。
(2)支給要件: 最近3ヶ月間の生産量や売上高などが前年同期と比べて10%以上減少していることなどが主な条件です。
(3)支給額: 休業手当に対して、中小企業で通常3分の2、解雇等を行わない場合は4分の3が助成されます。労働者1人1日あたりの上限額は8,265円です。
6,業務改善助成金
(1)概要: 生産性向上のための人材育成や設備投資等を行い、事業場内の最低賃金を引き上げる取り組みを支援する制度です。外国人労働者の雇用企業にとっては、業務効率化と処遇改善を同時に実現できます。
(2)対象投資: 機械設備の導入、ソフトウェア購入、コンサルティング、人材育成・教育訓練、多言語マニュアル作成、翻訳機器導入などが含まれます。
(3)助成率: 事業場内最低賃金と地域別最低賃金との差額に応じて75%〜90%となり、生産性の伸び率が一定以上の場合はさらに高い助成率が適用されます。
その他の国の支援制度・機関
直接的な助成金ではないものの、外国人雇用を支援する制度や機関も存在します。
(1)若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)
日本の高度な技能を持つベテラン技能者が直接企業に赴いて実技指導を行うもので、外国人従業員の技能向上にも活用できる「人」による支援です。指導料はかからず、材料費も規定の範囲内で運営側が負担します。
(2)外国人雇用管理アドバイザー制度
厚生労働省が運営する無料の相談窓口で、外国人雇用に関する労働契約、職場教育、改善策などについて、専門家が事業所を訪問して助言を行います。
(3)製造業外国人従業員受入事業
経済産業省が製造業における国内外の生産拠点の連携強化と技術移転を促進するために、海外拠点の従業員を最長1年間国内事業所で受け入れる制度です。
(4)国際化促進インターンシップ事業
外国人インターンの受入れを通じて企業の国際化を支援する事業で、中堅・中小企業向けに人材育成支援費が支給されることがあります。
(5)監理団体
「技能実習生」の受け入れ企業を支援する非営利団体で、技能実習生の受け入れから監理、企業と実習生双方のサポートを行います。
(6)登録支援機関
「特定技能」で外国人を雇用する企業に対して、支援体制の整備や支援計画書の作成など、外国人労働者の生活面を含めたきめ細かなサポートを提供します。
(7)国際研修協力機構(JITCO/ジツコ)
内閣府所管の公益財団法人で、主に外国人技能実習制度全般のサポート(申請書類作成支援、情報提供、セミナー開催など)を行うほか、特定技能制度もサポートしています。
地方自治体主催の外国人雇用支援補助金・支援制度
地方自治体も、地域の産業振興や人材確保を目的として、様々な外国人雇用支援制度を設けています。これらの補助金は募集期間が限定されており、年度ごとに内容が変更される可能性もあるため、常に最新情報を確認することが重要です。
自治体による支援は、以下のような多岐にわたるニーズに対応しています。
(1)住宅支援
社宅の修繕費や備品購入費、賃借料補助など。
例: 室蘭市 外国人就労者受入支援事業補助金(社宅の修繕等および備品購入費用、上限30万円)、印西市 外国人介護人材家賃補助金(介護士の家賃等、月額上限25,000円)。
(2)日本語学習支援
日本語教師の謝金、テキスト代、日本語学校の受講料、通信費など。
(3)コミュニケーション促進
業務マニュアルの多言語化、翻訳機導入、異文化理解研修など。例: 姫路市 外国人介護職員コミュニケーション支援事業補助金(多言語翻訳機導入費用、上限1万円)。
(4)初期雇用費用
人材紹介料、渡航費、在留資格申請費用など。
例: 能代市 外国人材受入推進助成金(新規雇用初期費用、上限20万円)、宮崎市 特定技能人材雇用促進事業補助金(特定技能人材の雇用に係る初期費用、上限15万円)。
(5)資格取得支援
介護福祉士や農業機械免許など、業務に必要な資格取得費用。例: 茨城県 外国人農業労働力確保支援事業(特定技能外国人の農作業に必要な資格取得費用)。
(6)その他
地域住民との交流会開催費用、メンタルヘルスケア費用など。
特に、介護分野では外国人材の活用を促進するための多くの補助金が設けられており、在留資格(特定技能、技能実習、EPA介護福祉士候補者、留学など)に応じた支援が提供されています。
これらの制度を効果的に活用するためには、自社の状況に合った制度を選び、申請要件や提出期限を正確に把握することが重要です。不明な点があればご遠慮なくお問合せ下さい。
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