試用期間中でも正社員扱い?
お客様から求人内容を確認して欲しいとご相談を頂きました。求人票の文章で、求人広告の代理店さんから、試用期間の取り扱いについて、「試用期間は〇ヶ月で、その間の雇用形態は正社員です。」という取り扱いで求人を出しましょう、と提案をされたそうです。
そこで、試用期間でも正社員扱いになるというのは正しいのでしょうか?
というご相談の内容です。試用期間って、多くの会社では人を採用する際に設ける制度ですが、本当に正社員と同じ扱いになるのでしょうか?
そもそも試用期間とは
試用期間とは、会社が採用する人が、実際に業務を遂行する能力があるか、自社でパフォーマンスを発揮できるか、また自社の風土に馴染めるかを見極めるための期間です。
法律的には「解約権留保 付 雇用契約」という契約形態にあたります。
「解約権留保 付 雇用契約」とは、試用期間中も会社と労働者間に労働契約が成立しているものの、会社側が労働契約の解約権を留保(一時差し控え、とどめておくこと)している状態です。つまり、本採用を前提としつつも、従業員としての適性を判断するための期間であると言えます。
したがって、試用期間中は通常の正社員とは異なり、企業側が留保した解約権を行使して本採用を拒否する可能性があるという点で、その身分は不安定な立場であると言えます。
つまり、試用期間を経て本採用されるということは、試用期間中の「解約権の留保」が無くなることを意味します。
試用期間中の取り扱われ方
試用期間中であっても労働契約が適用されていますが、完全に正社員と同じ扱いにならないわけではありません。試用期間中の労働条件や待遇に関しては、求人票で試用期間中と本採用後と待遇が同じかどうかを明記されています。この待遇が全く同じかどうかは会社ごとに扱い方が変わりますので、求人票を今一度ご確認して頂くのが宜しいかと思います。
ご確認頂くべき具体的な待遇とは
(1)労働契約書等で労働条件を確認
労働条件とは、始業時刻・終業時刻、休日や賃金等についてのことです。この労働条件については、労働契約書や雇用契約書に明記することになっています。
そもそも求人票で試用期間中と本採用後の労働条件が同じと求人票に記載されていたとしても、労働契約書等を取りまわす際に、試用期間と本採用後で給与、休日、勤務時間などの労働条件を試用期間中と本採用後で変えることができます。しっかり労働契約書等の内容をご確認した上で締結をするようにして下さい。
また、最近はお見受けすることがあまりありませんが、最低賃金を下回っていないかもご確認下さい。
試用期間中の賃金を低く設定する会社もありますが、著しく低い賃金は応募者が少なくなる可能性もあり、最近の求人では、試用期間と本採用後の労働条件をすべて同じに設定している会社もあります。
(2)社会保険・労働保険の適用の有無
試用期間中であっても、雇用されている労働者として労務提供するため、使用者には社会保険(健康保険、厚生年金)や労働保険(労災保険、雇用保険)に加入させる義務が生じます。試用期間中であるかどうかに関わらず、加入要件を満たす従業員は必ず加入させる必要があります。
(3)年次有給休暇の扱い方
年次有給休暇は、6カ月間の継続勤務期間に全労働日の8割以上出勤した場合に付与されますが、その為、6カ月以内の試用期間の場合だと有給休暇は発生しないことになります。
更に言うと、①「本採用日から6カ月間を継続勤務して、全労働日の8割以上出勤」なのか?②「試用期間の初日から6カ月間を継続勤務して、全労働日の8割以上出勤」なのか?という疑問がありますが、回答としては、②の「試用期間の初日から6カ月間を継続勤務して、全労働日の8割以上出勤」すると年次有給休暇が発生することになります。
(4)福利厚生の扱い方
勤めた会社の就業規則に、試用期間中の従業員を除外する規定がなければ、基本的に試用期間中と言えども福利厚生の制度も適用されることになります。
(5)試用期間中の解雇(本採用拒否)の扱い方
試用期間中での解雇(本採用拒否)の扱い方は、通常の解雇に比べて要件がやや緩やかですが、それでも客観的・合理的で社会通念上相当と認められる理由が必要です。単に「会社の風土と合わない」といった漠然とした理由や、社会通念上正当と認められない理由での一方的な解雇はできません。勤務態度や能力に問題がある場合でも、会社側は改善策の教示や教育の機会の提供など、相応の努力が求められます。
まとめ
正社員採用の試用期間中は、法的には「解約権留保 付 雇用契約」という特殊な立場ではありますが、労働契約上の多くの権利(労働条件、保険加入、有給休暇など)は通常の労働者と同様に発生します。
そういう意味では、完全に正社員と同一ではありません
ですが、単なる「仮採用」や「お試し期間」とは異なり、労働者としての法的な保護を受けられます。
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