自然災害に生じる安全配慮義務と労務の問題
自然災害が発生した際、企業は従業員の安全を確保するための責任を負います。この「安全配慮義務」は、企業の基本的な責任として、従業員の労働環境を安全に保つことが求められています。災害時には、企業と従業員の双方でどのような認識を持つべきかが重要です。
まず、「会社の認識」として、企業は自然災害が発生した際に従業員の安全を最優先に考え、業務の継続や停止、避難指示などを適切に行う義務があります。これには、災害発生時のリスクを事前に評価し、適切な対応策を準備しておくことが含まれます。一方、「従業員の認識」では、従業員も自己の安全を守るために、会社の指示に従うだけでなく、自らの判断で安全を確保する意識を持つことが求められます。このように、災害時には、企業と従業員が協力して安全を確保することが重要です。
自然災害における安全配慮義務
災害時に企業が負う安全配慮義務については、様々な視点から考える必要があります。
(1)業務上災害に該当するか
まず、災害によって発生した事故が「業務上災害」に該当するかどうかが問題となります。これは、災害が業務遂行中に起きたものであるか、または業務に関連して発生したものであるかどうかで判断されます。例えば、災害発生時に出社指示があった場合、その途中で従業員が事故に遭遇した場合は、業務上災害と認定される可能性が高いです。
(2)安全配慮義務に違反するか
次に、企業が「安全配慮義務に違反していたかどうか」を判断する必要があります。ここでは、企業がどの程度の予防策を講じていたか、または講じるべきだったかが問題となります。
①「業務上災害」と「安全配慮義務」の関係では、業務上の災害が発生した場合、企業が安全配慮義務を適切に果たしていたかどうかが問われます。
② 安全配慮義務の内容については、企業が行うべきだったが行わなかった行為が何であったかを明確にする必要があります。ア)例えば、避難指示を出すべきだったが出さなかった場合や、イ)災害のリスクを事前に予見できたにもかかわらず、何の対策も取らなかった場合は、安全配慮義務違反と見なされる可能性があります。ウ)さらに、適切な対策を講じていれば被害を防げたのに、それを行わなかった場合も同様です。
(3)予見可能性について
企業が災害を予見できたかどうか、そして予見に基づいて適切な対策を講じていたかは、安全配慮義務の判断において重要な要素です。企業は、自然災害の発生リスクを評価し、事前に必要な準備を行っておく必要があります。
(4)事前準備と安全配慮義務
企業は、自然災害に備えて事前準備を行うことで、従業員の安全を守る義務を果たすことができます。事前準備には、避難計画の策定、災害時の連絡体制の整備、緊急時の対応マニュアルの作成などが含まれます。
(5)事前準備と結果の回避可能性
企業が事前に適切な準備を行っていた場合、災害による被害を回避できたかどうかが問われます。事前準備が万全であれば、結果的に被害を最小限に抑えることができ、安全配慮義務を果たしたと見なされる可能性が高いです。
(6)事前準備と対策の重要性
最後に、事前準備と対策の重要性について強調します。企業が従業員の安全を確保するために行うべき対策は、自然災害のリスクに応じて適切に実施されるべきです。これには、定期的な防災訓練や設備の点検が含まれ、これらを怠ると安全配慮義務違反と見なされる可能性があります。
自然災害等における賃金の取扱い
自然災害が発生した場合の賃金の取り扱いについても、企業は慎重に対応する必要があります。
(1)賃金の基本的な考え方
自然災害が発生し、従業員が出社できない場合、賃金の支払いがどのように扱われるかが問題となります。原則として、労働者が労働の提供をした場合に賃金が支払われるべきですが、災害などの不可抗力により労働が提供できなかった場合、その賃金の支払い義務が免除されることがあります。
(2)不可抗力か否かの判断基準
賃金の支払いが不可抗力によるものであるかどうかの判断基準は、災害の規模や影響、企業が取った対応策によって異なります。企業は、災害の影響を受けた地域や従業員の状況を考慮し、賃金支払いの可否を判断しなければなりません。
(3)具体的な事案ごとにみる賃金の支払いの要否
賃金の支払いについては、具体的な事案ごとに判断が分かれることがあります。
① 従業員が就労できる状況にある場合、たとえ災害が発生しても企業が出勤を命じた場合、賃金が支払われるのが原則です。
② 一方で、従業員自身が災害の影響を受け、働きに出ることができない場合、その理由が企業に起因しない場合は賃金の支払いが免除される可能性があります。
③ さらに、従業員が有給休暇の取得を希望する場合、その申請が認められた場合には通常通り賃金が支払われますが、有給休暇の使用を拒否した場合には別の対応が求められます。
段落 | 見出し | テーマ |
① | 自然災害に生じる安全配慮義務と労務の問題 | 災害時における企業と従業員の安全意識と役割 |
② | 自然災害における安全配慮義務 | 災害発生時の企業の安全配慮義務とその判断基準 |
③ | 自然災害等における賃金の取扱い | 災害時の賃金支払いに関する基本的な考え方と具体的対応 |
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