会社に勤めて雇用保険に加入されている人は、多いのではないでしょうか。今後、雇用保険法がどんどん改正されるのを皆さんはご存知でしょうか。今回は、雇用保険法の改正について解説します。
2028年10月1日施行:雇用保険の適用拡大
2028年10月1日から施行される雇用保険改正法では、雇用保険の適用範囲が拡大されることになりました。
今現在の雇用保険加入条件は、「31日以上継続して雇用されることが見込まれ、かつ、1週間所定労働時間が20時間以上」となっていましたが、改正されると1週間の所定労働時間の「20時間以上」が「10時間以上」とされることになっています。
この改正では、「被保険者期間の計算」に新たなルールが導入され、短期間の就労者やパートタイム労働者も適切に被保険者期間を積み上げることが可能となります。これにより、これまで対象外だった多くの労働者が失業手当や育児休業給付などの受給資格を得ることができるようになります。
また、「失業認定基準および事故の労働により収入がある場合の取扱い」に関する基準が見直されます。失業中に偶発的な収入が発生した場合、その収入がどのように取り扱われるかが明確化され、給付の適正性が確保されることとなります。さらに、「賃金日額の下限額等への影響」も重要な改正点です。賃金日額の下限額が引き上げられることで、低賃金労働者の生活が守られ、全体として経済的なセーフティネットが強化されることが期待されます。
2025年4月1日施行:自己都合退職者への基本手当の見直し
2025年4月1日から施行される雇用保険改正法では、自己都合退職者への基本手当の見直しが行われます。この改正では、「自己都合退職者の給付制限期限の短縮」に関する措置が取られ、自己都合退職者に対する給付制限期間が現行制度より短縮されることになります。この変更により、自己都合で退職した労働者が、従来よりも早期に失業手当を受け取れるようになり、再就職活動をスムーズに進められるようになります。
さらに、「リ・スキリングを伴う自己都合退職の給付制度の解除」も重要なポイントです。リ・スキリング(再スキル習得)を目的とした自己都合退職の場合、これまで課されていた給付制限が解除されます。これにより、キャリアチェンジやスキルアップを目指す労働者が、失業手当を受給しながら安心して再スキル習得に専念できる環境が整います。この新たな制度は、労働市場の変化に対応しやすくするため、労働者にとって大きな支援となるでしょう。
2025年4月1日施行:育児休業等給付に関する改定
2025年4月1日から施行される雇用保険改正法の一環として、育児休業に関する給付制度が大幅に改定されます。まず、「出生後休業支給支援制度の創設」が行われ、子どもの出生後に一定期間育児に専念する親に対して、新たな支給制度が設けられます。この支援制度では、①支給対象者が一定の基準を満たすことで、育児休業中に支給金を受け取ることができます。②支給額は家庭の経済状況に基づいて算定されるため、安心して育児に専念できる環境が整います。③さらに、この支援制度は、配偶者の育児休業取得が要件とされていないため、個々の家庭事情に応じた柔軟な利用が可能です。
また、「育児時短就業給付の創設」も今回の改正の重要なポイントです。①育児のために短時間勤務を選択する親に対して、一定の条件を満たすことで新たな給付が支給される制度が導入されます。②この給付金は、賃金との調整を図りながら支給されるため、働きながら育児を両立させるための経済的支援が提供されます。これにより、労働者はキャリアを維持しながら、安心して育児に取り組むことが可能となり、企業にとっても優秀な人材の確保に貢献します。
その他の雇用保険法に関する改正
今回の改正には、育児休業や自己都合退職に関する変更以外にも、多くの重要な改正点が含まれています。まず、「専門実践教育訓練の追加給付」が導入され、専門的なスキル習得を目指す労働者に対して、これまで以上の給付が提供されます。また、「教育訓練休暇給付金の創設」により、教育訓練のために休暇を取得する労働者への支援が新たに開始されます。この制度は、労働者が自己のスキル向上を図る際の経済的負担を軽減し、職業能力の向上を促進します。
一方で、「教育訓練支援給付金の縮小」や「就業手当の廃止」といった改正点は、従来の支援を削減するものであり、特に支援が必要な労働者にとっては影響が大きいと考えられます。また、「就業促進定着手当ての縮小」や「基本手当の関する暫定措置の延長」も行われ、全体的に雇用保険制度の見直しが進められています。これらの改正により、雇用保険制度が労働市場の変化に対応し、より効果的な支援を提供することが目指されています。
実務への影響と会社が取るべき対応
これらの雇用保険改正は、企業の実務にさまざまな影響を及ぼします。まず、「雇用保険の適用拡大の影響」として、新たに被保険者となる従業員の管理や、適用範囲の変更に伴う保険料の再計算など、企業は労務管理の見直しが求められます。適切な管理システムを導入し、従業員への情報提供や教育を徹底することで、スムーズな対応が可能となります。
また、「育児休業等給付に関する改定の影響」も大きな課題です。育児休業や時短勤務に関する新制度に対応するため、企業は労働環境を整備し、従業員のニーズに応じた柔軟な働き方を推進する必要があります。これにより、従業員のモチベーション向上や企業の人材定着率向上が期待されます。企業がこれらの改正に適切に対応するためには、労務管理の見直しや新制度への対応策の検討が不可欠です。
段落 | 見出し | テーマ |
① | 雇用保険の適用拡大(2028年10月1日施行) | 雇用保険適用範囲の拡大とその詳細 |
② | 自己都合退職者への基本手当の見直し(2025年4月1日施行) | 自己都合退職者に対する給付制度の見直し |
③ | 育児休業等給付に関する改定(2025年4月1日施行) | 育児休業に関する新たな給付制度の導入 |
④ | その他の雇用保険法に関する改正 | その他の雇用保険制度改正と企業への影響 |
問合せ先
●「電話:011-748-9885 」 又は 「こちらのフォーム(メール)」でお申込み下さい。
株式会社ファウンダー / 社会保険労務士法人ファウンダー
受付時間 平日 9:00-20:00(土日祝も対応可)
所在地〒007-0849 北海道札幌市東区北49条東13丁目1番10号